【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -01-
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数学の担当は、学年主任で5組の担任をしている森本という中年男性だ。いわゆる“中年太り”で置物の狸のように腹が出ており、黒縁メガネをかけ、整髪料で頭髪は常にビッタビタ。そのくせスーツ姿で教鞭を執るので、初夏の声を聞くと言うのに暑苦しいったらありゃしない。もしも自分が氏の娘であれば、まぁ邪険に対応してしまうだろう。
「あー、相原さん」
授業終わり近くで唐突に呼ばれた日にゃ、それを見透かされたのかと心底驚いた。
「はい?私?ですか?」
自分を指さしてみせると、教室中の目が自分に集まる。彼女はどちらか言うと幼い顔立ちだが、驚いて目を見開いたその仕草は、まるで小ぶりの花がぱっと開いたよう。
「そう。帰りの会が終わったら職員室に顔出してもらえるかな。用事があるならいいんだが」
言われて、ちょっと自分、眉根が歪んだだろうと意識する。めんどくせーことだという直感。大した用事でなければここでその旨言うはずだからだ。
でもって、なにがしか“ターゲット”にされたのだとも判ずる。要するに大人の奸計を動員して自分に押しつけたい何かがある。
「顔だけですか?首から上は外せないんですが」
ダンスのモーションで“首のアイソレーション”と呼ばれる、首から上だけ左右に動かす動作をしてみせる。少し伸びて来た髪の毛ポニーテールにまとめているので、応じて左右に小さく揺れる。
教室中が吹き出した。
「姫不意打ち禁止!」
「馬鹿野郎面白いことは予告してからやれ!」
姫というのは彼女が相原姫子と名乗っているからである。転入して半年ほどだが姫または姫ちゃんで定着。対して教諭森本はその大きな腹をゆっさゆっさと震わせ。
「はっはっは。面白いことが出来るな君は。全体で頼むよ」
「パーツ全揃いだと高く付きますよ」
「はっはっは。じゃ、そゆことで」
森本は取り合わずに会話を切り上げ、チャイムと共に教室を出て行った。
程なく級友が机の周りに集まる。
「なんで姫?」
「いやー小テストも8点だったし……素行や成績のことじゃ無いと思うんだけどなぁ」
小テストは10点満点で、3点以下は居残り追試であったが。
「森本んとこの誰かに因縁付けられてる?」
彼女はあり余る個性の故に仲間も多いが敵も多い。難癖トラブル巻き込まれているのではないか……。
「ありがとがんす。違うと思う。それ系だったらコッソリ言うでしょうし」
ぶっちゃけ森本の脳みその中身あらかじめ知る手段がなくはない。ただそれやると態度外見に出てしまい、教員というのは長年の経験でそういうのを察知し、応じた“備え”を講じて事態がややこしいことになりかねない。それにどうせ内容が分かったところで向こうは押しつける気満々なのだ。
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