アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -029-
〝セレネ〟の先導を受けてスロープを上がって行き、出入り口をくぐる。入った中は外観に応じ湾曲した通路であり、船の前後へ向かって続いている。断面は六角形で床は黒。壁面と天井は純白で、天井は照明を蔵しているらしく、それ自体発光している。
似たような構造デザインを見たことがあるが、映画館のスクリーンでハリウッドのCGだ。
意匠性の故に船なのか、はたまた必然の故に船なのか。
思わず立ち止まり、見回すレムリアをセレネが促す。その歩く姿は装束のせいもあろう、歩くというよりも、浮かび飛ぶようなふわふわした動きだ。そして、どうぞ、と、通路側にセットされたドアをかちゃりと開いた。
一見したイメージは病院の個室。白一色で統一された壁と天井。簡素なベッドがあり、奥手に小テーブル。ベッドの上にはこっちの壁からあっちの壁へ板が渡してあり、荷棚に使えそうだ。EFMMが有する機能優先の簡易病室と構成が一致し、イメージはその故である。
ただ、その簡易病室は、金属とプラスティックの〝寝られる箱〟。対しこちらには、〝居住空間〟という雰囲気が漂う。同じものなのに違いはどこから。
「お花はデスクの上の花瓶へどうぞ。荷物を置いたら、メンバーに紹介したいので、操舵室までご案内します。奥手左側がクローゼットになっています。一番奥の扉がユニットバスです」
「あ、はい」
キャリーバッグの荷を置き、コートを脱いでクローゼットにしまい込み、バスルームで花瓶に水を入れ、オリエンタリスを移す。
再び先導を受け、今度は船尾方向へ。
「ごめんなさいね狭くて。あなたが女の子と伺って慌ててスペースを割いたものですから。好きに使って下さいね」
「あ、はい……」
さっきから同じことばかり口にしている気がする。
しかし、何と返事すれば良い物やら。
SF宇宙船の通路を行く。出入りスロープの位置を越え、更に船尾へ歩く。
左手に大きな扉。二枚パネルの組み合わせ。左右に開く日本で言う〝観音開き〟。その有様はやはり映画で見た大銀行の秘密金庫。
「わたくしです。メディア姫、レムリアさんをお連れしました」
セレネが扉に向かって声を出す。人語を解すロボットドア?
そうではなかった。ドアパネルにインターホンが仕込んであるのだ。
了解の旨英語が返る。相手は男性で、声音からして自分の父親くらいの歳か、若干イタリア訛り。
程なく、大きな金属同士が接触するガチャーンという音がし、伴い、遠くの雷のような、ドーンという余韻を引いた。
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