【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -06-
「その女子にこの話をしている時、男子が『あいつ休み時間に本見てるんだけどよ。ヘビの図鑑なんだぜ』って、それで女子が『うわキモっ』て」
「あぁ」
姫子は自分でも判るくらいシニカルに唇の端を歪めた。
(ヘビの図鑑w)
多分、なのだが、“女の子としてあるべき姿・しかるべき話題・興味“が、同調圧力で決まっていて、そこからはみ出た者をキショいと排除する傾向があるのだ、日本の女子は。道徳だかで外部講師サマによるジェンダーフリーのご高説を聞いた時にそのことを思い出して吹き出した記憶がある(何がおかしいの?と怒られたわけだが)。
「普通じゃない、という意味のキショい少女、という一般評なんですね?先生自身はどんな印象ですか?家庭訪問で面談があったと思いますが……」
姫子が転入してきたと書いたが、その前は“海外”であり、日本の学校システムは全てが初めてだ。運動会前にそれはあり、自宅自室で担任と二人きりで話す機会があった。
すると森本はため息をついた。
「出来てない。去年も今年も多忙を理由に断られた」
「家庭環境は複雑……普通の女の子とは趣味が違う……他には?」
すると森本は「おおそうだ」と膝を打った。
「先日君がナイフで襲われた時な」
唐突で物騒な言葉であるため説明する必要があろう。あるカップルの崩壊に関わってしまい、別れをそそのかしたのは自分だと逆上した元彼が教室に乱入してきて刺されそうになった。前述の難癖トラブル、である。
「ゴキブリがいっぱい沸いて、あれ、ウチのクラスにもウジャウジャ入り込んでパニックになったんだ。でも森宮だけは平気で……ちょっと待ってくれ」
森本は立ち上がって相談室を出た。何か思い出したらしい。
さて面倒だ、というのが、ここまでの姫子の率直な感想。ゴキブリが平気な時点で確かに普通の女の子とは見られておるまい。併せて、家庭環境も考えると、選んだ孤独、という彼女の心理が見えてくる。
森本が何か書面を持って戻ってきた。
「これだ。『虫が好きなのは分かりますが、気持ち悪がる子もいるので、もう少し配慮してくれたらと思います』」
それはどうやら1年生の時の担任から引き継いだ(2年と3年はクラスも担任もそのまま持ち上がり)、彼女の評価のようだ。いいのかそんなの生徒に見せて。
「虫好き、なんならヘビもOKのキショいオンナ」
結論はこうなる。
「まぁ……」
「そこに違うクラスの私が唐突に近づいてお友達になれ」
「いや……ああ……」
森本は舌打ちし頭を抱えた。自分がどれだけ無理難題を押しつけているか、ようやく自身の理解が行ったようだ。
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