アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -038-
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見たままを書けば、正面スクリーンに映っていたのは最初、トンネルの黒い断面であった。それが刹那、文字通り刹那、画面左右に一瞬白い光が現れ、次いで一面の青に変わった。
その青が空であると判った時、レムリアのコンソール上の画面は、世界地図を映していた。地図上の赤い丸印が船の位置なら、アラビア半島東端を南下中ということになる。
本当だろうかという問いが声にならない。まばたきする前はアルプス山懐コルキス王宮の地下にいたのだ。さながら瞬間移動である。これは夢か、それとも時を旅して未来に来たのか。アルゴ……その名は建造した大工の名にちなみ、神話において黒海を高速で馳せたという。たった今その名を受け継ぐこの船は星の海を行けるという。星図の南天に描かれたアルゴが時を経て実際に動き出したか(現在のりゅうこつ座・ほ座・らしんばん座・とも座は、アルゴ座を分割したもの)。
「レムリア。船底カメラ画像を正面スクリーンに展開せよ」
アルフォンススの指示。
「はい」
見ると、三面ある液晶モニタのうち、右側モニタ画面は六つに分割され、その中に〝船底カメラ〟の文字の付いた画像がある。
「指先かペンでタッチ」
シュレーター。言われた通りにチョイと触ると文字が出、カメラを動かすか、映す先を変えるのか(move or screen)、と訊いてきた。映す先を触ると、リストが出てきて一番上に〝メイン〟。
メイン、の文字に触れると正面スクリーンに出た。
それは、テレビで見た宇宙中継を思わせた。宇宙ステーションにテレビカメラを持ち込み、延々地表を映し続けたものだ。但し今見ているこちらはその数倍速の動きを見せる。最初に視界に収まったアラビア半島は既に画面下方へ去り、インド洋がスクリーン全体を青く染める。
時々白い塊が目にも留まらぬ早さで画面を横切る。それは目の前画面の〝船首カメラ〟と見比べたら雲だと判じた。雲が船底カメラのすぐそばを横切る時、画面が一瞬白くなるのだ。
「巡航。探査自動航行確認。INS解除」
「INS解除確認」
アルフォンススにシュレーターが答える。
わずかな電磁音が操舵室の無音を遮った。〝乗り物に乗っている〟感覚が戻る。
「では、わたくしは探査に入ります」
セレネの声が聞こえ、彼女が副長席のシートをリクライニング動作させ、仰向けになるイメージがテレパシーで飛んできた。
どうやらセレネは自分にテレパシーを同調させているらしい。この力を精神感応と表現することがあるが、今、自分たちの間に生じている現象はそう表記するのが相応しい。この手の活動で重要なのは〝発見〟であり〝ピンと来る〟だろう。テレパシーで共有・共感できれば、この辺を強化でき、次のアクションに移るのが早くなる。それをトリガに船を直接制御可能、であれば、なおさらであろう。
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