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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -059-

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 レムリアはセレネと顔を見合わせた。
「不可能ではないと思いますが」
 2人の総意。すると。
「停船して持ちかけろ。女の子の対応を受け入れるなら本船の目撃を不問に、さもなければ記憶を消す」
 強引な……レムリアは思った。ただ、テレパシーは、それに否定の感情を与えない。
 セレネと頷く。女の子を受け入れてくれる位なら、船の秘密を話したりはしないのではないか。
 裏切ったらその時はその時。
 テレパス二人の結論は一致した。
「降下してください。透過シールド解除。仰臥の人物に託します」
「了解。シュレーター、直下に暴風を生じないように降下せよ」
「了解」
 それは外見的には、深夜中空に突如帆船が現れ、すーっと降りて来るという光景。
 当然、人物は双眼鏡を外し、展開される状況をあんぐりと口を開けて見ている。
 レムリアにとってそれは〝平和な国ニッポン〟という言葉がもたらすイメージを遙かに上回る衝撃であった。
 当該人物は眼鏡をかけた青年と思われた。申し訳ないがテレパシーで覗かせてもらうと。
 冬の深夜にゴロ寝して流星観測。
 えっ……という衝撃がテレパス2人を捉えた。更にレムリアには冬の深夜に寝袋に入って転がっていること、それで襲撃を受けたりしないこと。および、近隣にこの行為を訝しく感じる者もないという状況に唖然と驚愕。
 なんだ、この国は。 
 まるで自宅庭先にいるような風情雰囲気。
 日本とは、こういう国か。
 青年が寝袋から這い出てきた。キモノ(半纏である)を着ている。
 目の前に降りてきた船を右から左までくまなく見渡す。
 空から船が降りてくる。それはおとぎ話の始まりそのものであって、常識で考えると受け入れがたい状態のはずである。
 だが、青年は逃げるでなく、怖がるでなく。
「本船を宇宙船と認識しているようです。飛行原理は何だろう」
 セレネの報告に船長は笑った。
「そいつは驚いた。本船を見て驚きもせず、どうやって飛んでいるんだろうって?」
 レムリアはセレネと認識を一つにした。
 この人だ。自分の魔法が、仕事をした。
 青年の認識が変わらぬうちにとスロープを下ろし、ちありちゃんをアリスタルコスに抱えてもらって、レムリアが先導し、船から下りる。日本語が解るのは自分だけであるから、方法は他にない。
 青年の認識はアニメの世界である。〝空から女の子が降りてきたぜ〟。
 ぐったりした少女を抱えた大男と、黒曜石の瞳に星の光を蔵したショートカットの娘。
「この子を知りませんか。ちあり・いぬかい」
 レムリアは青年に向かって問うた。その名を出せば、青年はこれが夢でもファンタジーでもないと認識するだろう。

(つづく)

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