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2025年9月11日 (木)

アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -041-

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10

 セレネの声に、レムリアの意識は宇宙旅行から現実へと舞い戻った。
 この間に船は地球を二周。担当しているレーダ画面に赤い×印が点滅している。
 そこは副長セレネが〝心の悲鳴〟を拾った位置だと知る。
 船のコンピュータから、自動制御でそこへ向かう旨の合成音声。英語であるが日本語で記す。『位置を同定しました。INS作動し、加速します』
 再び一瞬の無音の時間が訪れ、映画のシーンチェンジよろしく画面が光り、何か映し出す。
『目標同定。減速します』
 船が言い、スクリーンの脇に地図が現れ、赤い「+」の記号を表示。
 正面モニタの映像が停止した。
『停船。INSオフ。制御権を委譲します』
「制御権を掌握した」
 シュレーターが応じ、イヤホンがピンと鳴る。操舵権が舵手に移った旨は各自の席にも表示が出る。
 スクリーンの光景はほぼ夜である。赤外線から起こした画像に変換すると、茶色く渦巻く濁流の大河が確認できる。
 レムリアは画像の隅々に目を走らせる。この川で遭難事故があった、ということだろう。アメリカのワイオミングとアイダホの州境。山奥だ。
「高度海抜1650メートル。船の位置は川面まで15メートル。天候は快晴。時刻は現地時間1800(いちはちまるまる)」
 レムリアは報告した。初めてのシステムで初めての活動。応じた緊張感はあるが〝救助活動〟自体はいつものこと、であり、事態に対して平常心というか〝そのモード〟に心身がスイッチしたというか。
「夜間につき透過シールド解除してもよろしいかと」
 セレネ。見られる心配はない。
「了解。透過シールド解除を許可」
「透過シールド解除した」
 セレネの提案にアルフォンススが応じ、アリスタルコスが操作する。
「現在遭難者を捜索中です」
 セレネが言った。レムリアはトラックボールを動かして地図の縮尺を変える。氷河見物が有名な国立公園。
「晴れているのに鉄砲水?」
 レムリアは思わず呟いた。場所柄鉄砲水自体はあり得ると思うが、空を見る限り豪雨の痕跡は感じず、氷河が崩れる……雪解けの時季ではもちろんない。
「氷河の下は溶けていて新雪の重みで滑った……あたりじゃないのか?氷河は世界的に失われつつあるんだろう?」
「温暖化、か」
 双子の会話。もたらす干ばつや高温が、いわゆる〝南北問題〟における貧困地域に影響を与えていることは肌身で知っていたが。
〝北側〟にも影響が出始めたのか。
 超感覚が反応する。
「あっ」
 それはセレネも同時であったようで、思わず互いに顔を見る。二人同時ということは、どちらかの思い違いや認識ズレは無い、ということ。……自分達の能力こうやって連携させれば確度が上がる。

(つづく)

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