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2025年9月12日 (金)

アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -042-

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 拾った感情はこの場所で恐怖と驚愕を感じたというもの。その残照である。……残り香・移り香という言葉があるが、それの記憶版と解釈されたい。強い心の擾乱が痕跡を残したのだ。SF用語で残留思念とも。併せて感じる〝守らなきゃ〟他は疑問〝なぜ・どうして〟。
 間違いない。鉄砲水に遭難者は流された。
「遭難者はこの川に流されたようです」
 セレネが声を出した。眼下には流れの中に倒れた道路橋と、そこに引っかかって積み上がっている無数の流木。
「了解。本船は流れに沿って下流へ動く。頼むぞテレパス」
 シュレーターが船を水面ギリギリまで下ろし、濁流の行方を追う。
「生命赤外線センサ、合成開口レーダ作動。レーダは全波長スキャン」
 アルフォンススから技術による探査の指示。
「はい。人体検知、SAR(合成開口レーダの英語表記Synthetic Aperture Radarの略称)作動。レーダは全波長利用モードにセット」
 レムリアは液晶パネルを指先で叩いて次々起動し。
「……でも何故SAR?」
 振り返ってアルフォンススに意図を訊く。ヘルプを覗くと輪郭を見出すために使うと書いてあるが。
「人工物なら不自然な形状をしているだろう」
 レムリアは納得し、向き直って画面の有様に凍り付く。
 滝である。その流れ落ちた中に船のセンサが何かを見つける。形状同定がなされ、ワンボックスタイプの車であるとの判定が出た。ただし水面下であり、上からは泥水の色もあって見通せない。
 流れ落ちるその直下で水車のようにくるくると回転している。
 すなわち、
 ミッション:滝壺で回転するクルマから救い出せ
「乗員は生きていると思われます」
 レムリアはまずは安堵し、報告した。状況は不明だが乗員は生きている。4名である。
 しかし残された時間は長くない。長時間の回転、低温、車中の空気も酸素が薄くなっているであろう。以上看護師なりの知識とテレパス。
「まず水を一時的でもいいから止めねば」
 アルフォンススが言った。
「ダムが作れれば、ですね」
 セレネが同調し、周辺地形をスクリーンに投影する。
 滝であり崖があり岩がゴロゴロ。
「切り取って……」
 そこでレムリアは思いついた。この事故は氷河が溶けて起きている。
「上から氷を切り取った方が早くないでしょうか。やがて溶けるので環境負荷も少ないでしょうし」
「採用する」
 アルフォンススが即断。レムリアは更に、
「それと、中の人たちに呼びかけたいのですが」
 今すぐ助けると伝えて元気づける。自分のテレパシーはこの距離では相手を拾えるのみ。送り込むには目と目が合うほど近づいている必要あり。
 セレネは形而上的呼びかけには否定的見解を示した。現実離れし過ぎており、逆に“天国からのお迎え”に捉えられる。なるほど。

(つづく)

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