アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -069-
すなわち兵士の死因は放射線がらみ。というか、強力な放射線を浴びた結果、自身も放射線を放つ状態になってしまった。〝放射化〟という奴だ。……以上シュレーターの意思を読み取って。
〝あり得ないことが起こっているというメッセージとして〟
ヘリコプターはEFMM所有とすぐに判明。
『重大なことが起こり、解決を要請されたが拒絶。強制されたがなお拒絶』
自分の言葉を反芻する。
核物質に関わり何かが起こり、何かを要請されて断り、EFMMのメンバーは姿を消した。
「ラングレヌス」
「おうよ」
アルフォンススの声に大男が応じた。
レムリアはギョッとする。不死身という触れ込みの彼だが、放射線障害の機序は遺伝子を傷つけるもので、前記したような銃弾等に対する頑強さと異なる。
「心配のお目々だなレムリア。優しくてありがたいね。だけどよ、この船のウェアは宇宙服として対放射線防御能力があってな。宇宙空間は放射線のシャワーの中だから応じた作り。大丈夫だよ」
大扉へ歩きながらラングレヌスは言い、その背中にレムリアは思わず微笑みを浮かべた。
そして、大男は、扉の向こうへ出ながら振り返って一言。
「多分、な」
ニヤッと笑い、扉を閉めてしまう。
「総員手がかりを探せ。カメラ、レーダ動員せよ。テレパス。人の意識は感じないか」
「いえ……いや、西へ流れる感あり。西へ流れています」
セレネが答える。レムリアは船長副長のやりとりに唇を噛みしめ、自席の画面に目を戻す。
今大事なのは、EFMMのメンバーを見つけること。
テレパシーは何も明確なことは言わず、画面にあるのはヘリコプターと兵士の遺体だ。ちなみに、レムリアの能力ではいわゆる幽霊・霊体とテレパシーで意思疎通は出来ない。〝次元が違う〟ので成立しないらしい。魔女だから天国方面はお断りなのかも知れない。
画面にウェアをまとったラングレヌスが歩いて来る。先回と同じく長銃を背負い、それと別に腰元に何か機器を付けている。画面に出ている使用機器表示には放射線検出器とあるのでそれだろう。マイクのような形のセンサーを手にし、横たわる兵士に向ける。
船内画面には赤文字で警告。大丈夫と言われても、不死身という触れ込みでも、やはり心配は払拭できない。
しかしラングレヌスの物言いは至って落ち着いたもの。
『数値が振り切れる。頭から足の先まで背中一面反応する。この兵士が被曝したことは確かだろう』
「了解。兵から距離を取り指示を待て。レムリア、この兵士の過去の動きを探る。マイクロ波SAR用意」
「はい」
アルフォンススはレムリアに命じた。
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