アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -070-
自分に言うからには探査装置の名前であり、画面を操作してメニューから探す。シュレーターの説明によれば、輪郭が強調された画像が得られるレーダだという。マイクロ波は電波の種類であり、SARは合成開口レーダの意(synthetic aperture radar)。
当該レーダの文字を見つけ、指先でタッチしたら画面がモノクロになった。
「えっ」
間違えたかと思ったが、そうではなかった。
兵士の脇から、土に描かれた筋が浮かび上がる。
車のタイヤ痕である。〝輪郭が強調〟された結果、抜き出されたのだ。
メンバー達は車で連れ去られたのか。
「ラング、バーチャルを使え。タイヤ痕を追う」
『了解』
ラングレヌスは答え、女性の髪飾り、カチューシャに似た器具を取り出し、カチューシャ同様に頭に装着した。但しその〝カチューシャ〟からは顔の前にアームが伸びており、左目の前に小画面がセットされる。
ラングレヌスはその姿で振り返り、船のカメラに見せて寄越した。彼の小画面に船内のモノクロ画像が伝送され、同じ画像が見られるらしい。現実風景と重ね合わせる。後にAR(Augmented Reality:拡張現実)と呼ばれる仕組みである。
タイヤ痕に沿って進む。少し行くと幾人か兵士が倒れており、いずれも脇を通るたびに船内画面に警報が出る。そして、いずれも船の側に頭を向け、俯せに倒れており、例えば逃げてくる途中背後から爆風を浴びて倒れたとするなら、向きが揃っているのは理解できそうだ。少なくとも何らかの核事故が起こった、とは確実に言えそうである。
だとしたら……レムリアが気になるのは、メンバーもそうだが。
危険な作業に従事していた地元の人たちは?
超感覚が反応。
「えっ」
「あ」
それが〝殺意〟であることをセレネと同時に認識する。
刹那の後、銃撃を受ける。自動小銃、いわゆる機関銃による側方からの狙撃であり、乾いた連続発射音の後、ラングレヌスの身体が左右に小刻みに揺れる。
彼の身体に着弾したのである。ガムの噛みカスのような物が幾つか、彼の身体の傍らに無造作に転がる。変形を受けた弾頭である。
『痛え。船長、反撃良いか』
彼はまるで他人事のように許可を求めてきた。戦車でも操縦しているかのようだ。
「そのまま行け。攻撃の火の元に敵の本拠がある」
『オトリになれと。了解』
それは、彼が進むのをやめないならば、敵は次々攻撃者を送り出さねばならないであろうの意味。更に言うと、その攻撃者は前哨で足りないならば、本拠地から出てくることになろうという意味。
よって敵の本拠をあぶり出せる。
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -81-(2025.11.15)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -15-(2025.11.12)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -80-(2025.11.08)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -14-(2025.11.05)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -15-(2025.11.12)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -14-(2025.11.05)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -13-(2025.10.29)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -12-(2025.10.22)


コメント