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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -072-

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 程なく各人のイヤホンから電子音が聞こえ、それぞれのコンソールに権限移譲した旨表示が現れる。
『判断結果を合議の上、副長の認証を得て実行せよ』
 レムリアのコンソールで一つ画面が開いた。
 それは、武器を〝着て〟舳先に立つ船長アルフォンススの姿であった。
「ショルダーブレイス(Shoulder Brace)ってんだ」
 シュレーターが唇の端で笑う。一言で済まされたそれを理解しやすく書くならば、防弾チョッキの肩の上に銃器装架用の台を追加したものだ。そこに機関砲と思しき銃器を搭載し、腕と銃器が一体化している。
 船長アルフォンススは同じくカチューシャをセット。すると、船長と電子的に融合した、と船は言って寄越した。
 それは身体の一部に武器を備えた人間である。稼働中武器としてFELという文字が加わる。
 機関砲と思しき巨大銃器の正体、FEL(フェル)。Free Electron Laser:日本語では自由電子レーザという。任意波長のレーザビームを生成する。

Aho_2

(現物はまだデカい)

 それは未来世界を舞台にした戦争さながらであった。
 大地の蓋が開いて現れたのは、円形のコンクリート平面であり、円の中に〝H〟と描かれたヘリポートであり、エレベータの扉と思しき構造物であり、
 銃器構えてズラリと並ぶ迷彩服の攻撃隊であった。
 その、攻撃隊を、アルフォンススは左から右へ一瞥した。
 それは文字通り、視線を左から右へ走らせただけであった。
 兵士一人一人を、彼の網膜が捉え、その旨が赤い四角で大画面の居並ぶ顔にマークされ、同時に、彼らの手にした武器が赤熱溶解した。
 アルフォンススが〝見る〟ことは、その瞬間に照準され発砲される意味であった。
『強襲』
 アルフォンススが言った。
「了解」
 シュレーターが答えた。
 兵士達は己れらの武器を作動させようと引き金に手をし、無力化の事実に気が付いた。
 次いで溶解の熱さの故に放り出した時、彼らは目の前に唐突に出現した船の姿を見た。
 船の傍らには、異常な武器を手にした3名の男があった。
 小銃が溶けたことで腰のピストルを抜こうとした者もいた。しかしピストルもその瞬間に蒸発するのであった。
 異常な男達は進み始めた。兵士達はそれぞれに降参の意を示して両手を挙げ、異常な男達に道を空けた。
 異常な男達は、Hマーク近傍に立ち、アリスタルコスと、アルフォンススの銃器から、それぞれ多数のレーザが走って煙が上がった。
 Hマーク近傍が円形に切り取られ、その中央をラングレヌスのレールガンがヒットする。それはこのコンクリートの平面下にまだ何かあることを意味した。まぁ、エレベータがある位だから当然そうなのだろうが。

(つづく)

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