アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -071-
程なく、行く手タイヤ痕の向こうに、銃というには大がかりな武器を抱えた兵士。
抱えているそれは、ゲリラが野戦病院を襲撃するのによく使うため、レムリアにも何なのか判った。
一応カーソルを合わせ、船に識別させてみる。
思った通りである。肩に担げる小型ミサイル、スティンガー。
「アリス!」
『甲板だ。射程に入り次第落とす』
彼の声はイヤホンから届いた。レムリアが画面をいじっている間に操舵室を出、甲板に出たらしい。
「撃って来ます」
これはセレネ。程なく、カーソルを当てたそれが火を噴く。
ミサイル本体がランチャーから射出され、加速を開始。
煙が弧を描いて飛来……船のカメラが自動追尾している。
レムリアの画面に何か文字。そのまま読み上げる。
「シーカー(目標捜索装置)探知」
「逆照準……アリス」
画面の動きを書けば、ミサイルが搭載していた探査装置の出所を船のコンピュータが逆探知、アリスタルコスのレーザガンの照準をミサイルへ誘導。
画面を横切る緑の光条。
ミサイルが胴体部分で真っ二つとなり、爆発する。まるで刀で切り裂いたよう。
その爆発の煙の向こうで、事態に気づき、明らかに驚いて反転逃走する兵士たち。
『おいおい』
ラングレヌスの呟き。
『こいつら、地下に何か作り込んでるぞ』
言葉尻に含む不敵。
画面奥に逃走する兵士達を、カメラのズームで追いかける。
彼らは走り、地面に飛び込むような仕草をし、そのまま姿を消した。
例のSARに切り替えるが、塹壕の類は無いようだ。銃口だけこちらを覗いているような感じでもない。船のセンサも武器を検出しない。
完全に姿を消し、攻撃してくる気配なし。地下に絶対安全の構造物があり、その中に入り込んだと考えるのが妥当なようだ。
「なるほど」
アルフォンススが呟いた。
「更に来ます」
セレネが言った。
レムリアにもそれは感じる。ただ、それは個々の具体的な攻撃手段を示していない。
もっと大規模。ズラリと並んだ殺意。
「大きいです……」
感じたままレムリアは呟いた。
池に落ちた沢山の雨粒の波紋が重なり、一つの大きな波になるように、殺気が重なり、合わさり、全体として衝撃波を形成し、攻め寄せてこようとするのを感じる。
重低音。
地面が割れる。
地割れではない。それは地面を装った、蓋。
それこそアニメの秘密基地のように土と草を生やした大地が2つに割れ、左右に開いて行く。画面に幾種類もの警告が出て赤くフラッシュする。照準システムの探査ビーム、赤外線探知装置。
「武器多数」
船のコンピュータがズラズラとリストして寄越すが、読み上げるには追いつかないのでそんな言い方になる。
「副長指揮を頼む」
アルフォンススは言うと、自席を立ち、背後扉より姿を消した。
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