アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -066-
それともう一つ。
「レムリア?」
端末を黙って見つめるレムリアに、セレネが訊いた。
かけ直してはならない。違和感がある。
「今の着信に逆探知はかけられますか?」
レムリアは訊いた。
「何故ですか?」
セレネが訊き返す。レムリアの抱いた〝違和感〟に超感覚の発動を感じている。
レムリアは答える。
「緊急呼び出しはショートメッセンジャーの一斉送信が普通なんです。一人一人に団長自ら電話を掛けるなんて悠長なことはしない」
「裏に何かあると」
「ええ」
「船長」
「了解した。試みよう」
セレネの口添えにアルフォンススが答え、自らコンソールを操作した。伴ってメインスクリーンに小画面が一つ開く。
その画面の構成は、レムリアにはネットの〝チャット〟を思わせた。パソコンの歴史を知る向きにはコマンドプロンプトと言った方が実際には近い。
「これでコンピュータと会話を行い、探知した電波の座標を出させる。EFMMの使っている通信システムは?」
「インマルサット」
レムリアは答える。それは20世紀から存在する衛星通信システム。及び衛星自身の名前。
開いた小画面で英語のやりとりが走る。その間にレムリアはEFMMの本部に電話を掛ける。
電話端末の問題なら、この発呼は失敗するはず。また、本当に自分に用事があって切れてしまった、であるなら、本部にメッセージの一つもあるはず。
それに、本部はメンバーが今どこにいるか把握している。船の探知がそこと一致するなら。
この船なら、そこまで飛べる。
数秒で。
「メディアです。団長と……」
応対した事務の女性の声は切迫していた。
『ああ姫様。実は定時通信が途絶えました』
操舵室内にスピーカーからの声が響く。
メンバーの注目が集まる。
「今回の予定の場所は?」
『アフリカの……』
国際安全保障上の理由から名を伏す。
その場所を聞いたアルフォンススの動作が、にわかに慌ただしい。
「過去1時間にアフリカから発呼されたインマルサット向けの通信は7件。そのうち1件が合致する」
画面に地図が用意され、伏した地名その場所に、発呼位置の「+」マークが重なった。
「ありがとう。……嫌な予感がします。行ってみます」
レムリアは確信を得て言った。
『行くって姫様今どち……』
答えず切る。説明できないし信じてくれない。
「船長」
「シュレーター行け」
「了解。当該座標に急行」
程なく、INSが作動し、超絶の加速を行い、速度を落とすと森林地帯。アフリカ大地溝帯に属する、とだけしておく。
「ここは、EFMMでは定期巡回点に定めています。理由は……」
レムリアは地図上の「+」をトラックボールで動かしながら説明した。
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