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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -073-

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 円形に切り取られたコンクリートが外れて落ちる。その下は。
 ラングレヌスがそばに立ち、そこから中を覗き込んだ。
 ゴーグルカメラが捕らえ、船の画面に映し出す、地面の下に広がるブルー。
『映った空、じゃねぇな』
 ラングレヌスの呟き。
 船の画面全てに、警告の赤が表示された。
 着色を解除すると、文字だけが残る。人跡未踏の秘密の湖のような映像の中、高温注意、および、高強度の放射線。
「チェレンコフ光。これは水で出来た原子炉だ」
 シュレーターが言った。
「ウラン鉱山と言ったな」
「ええはい」
 レムリアは答えた。
「鉱脈全体を水で包み込んだのだ。プルトニウムでも生産してるんだろ。蓋してカモフラージュさ」
『それは、天然原子炉の条件を人工的に、ということか』
 アルフォンススが口を挟んだ。太古の地球において、ウラン鉱脈を地下水が取り囲んだ結果、継続的に核反応が生じる条件が整った〝天然原子炉〟が構成されたことがある。
「そうだ。被曝の危険さえ誰かに押しつければ、水を流し込むだけだ。技術も資材もいらん。効率は悪いが、確実だ」
 シュレーターの声に重なり、双子のどちらかの声がイヤホンにボソボソ。
『口を割ったぞ。医者達はこの池の地下10キロ、プルトニウム抽出工場だ。但し引き換えに逃がしたぞ』
 命の保障と引き替えに聞き出したらしい。10キロ。レムリアのテレパシー能力の限界を超える。
 対して。
「私なら……のはずですが。感じ取れません。放射能や大量の水が影響しているのでしょうか」
 セレネは困ったように言った。
『まぁ追求は今はいい。問題はどうやって行くかだ。人質取られた要塞攻撃は難儀だ』
 アルフォンススは溜息をついた。
 レムリアに訪れる。それは天啓。
「私が行きます」
『なに……』
 アルフォンススだけではない。メンバー全員の驚愕と呆れた感情を受け取る。
 別に単なる無茶無謀な発言ではない。
「EFMMメンバーは私ならすぐ判るからです。警戒を解いてもらう必要がありません。それに、今まで散々姫として庇護を受ける立場でした。皆さんのお力添えを得て恩返しをする時は今です」
 及び。
「それに、突然女の子が現れるというのは色々と混乱を招くでしょうから」
『何だって?』
 意図するところ、殺戮の亡者と化した男達が荒れ狂う戦乱の地において、小娘という存在が現れるインパクト。
 何もないとは思わない。経験が確信を与える。
 例えば難民キャンプを襲う自称〝聖戦士〟。テントの幕をめくると異邦人の少女、このシチュエーションに過去驚かなかった者はない。
 
(つづく)

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