【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -12-
いやちょっと待て。
姫子は気付いた。森宮のばらの様子がおかしい。急激に顔色が悪くなる。この子は失神する。毒蛇への極度緊張からか、急に動いて起立性低血圧(朝礼中にぶっ倒れるアレ)を起こしたか。
「ちょっと待ってあなた顔色が……」
ふらつく肩を支え、額に手をやると凄い高熱。
なら違う。それは本当はボロボロの身体を精神的に鼓舞して耐えていた、ことを示唆した。ヒロスの解放がトリガとなって力が抜け、ガクンと来たのか。
「やばい。救急車呼んでもらえる?」
姫子は平沢を見た。衛星携帯電話は持っているが、“日本から”という形で信号が飛ぶので、この場所に救急車よこせと頼むのは簡単には行かない。
「え?お、おう」
とはいえそもそも携帯オーケーな中学ではなく。彼は学校めがけて走り出そうとしたが。
「だめ……呼ばないで……病院は……お金が……」
か細い声を聞いて平沢が立ち止まると。
のばらは失神した。膝がガクンとなり、崩れ落ちるように仰向けに倒れ込む彼女を、平沢が俊敏な動きでしゃがみ込み、手を伸ばして捉え、お姫様抱っこ。
「姫ちゃん……」
困惑する平沢に姫子は周囲を見回し。
「誰もいないね。病院がイヤだと言うなら奥の手使うしかないでしょう。ちょっと抱っこしてて」
「レムリア案件」
姫子はうなずき、背中に回したウェストポーチに手を伸ばし、取り出したのは軍用無線機に似たごつい機械。
衛星携帯電話。
アンテナを伸ばし、電波を捕まえ、発呼。
「Hello, this is Lemuria. We have a patient. Please dispatch ARGO immediately. The symptoms include a high fever, likely due to malnutrition. Please also prepare a food supply pack. That is all.」(雑訳:レムリアです。高熱を発した急患がいます。幾らか食糧持ってアルゴ号を派遣願います。以上)
「俺はどうすればいい?」
「学校へ戻って森本先生を捕まえて。いなければ奈良井先生で。森宮の体調が優れないので相原と一緒にいますと伝えて欲しい」
「判った」
会話が終わると程なく、竜巻かと思うような暴風が上空から吹き下ろし周囲に広がり、草むらを吹き倒し土埃を巻き上げる。
風に刃向かって彼平沢は少女を抱いて立ち、彼女姫子は猫を四阿へ行かせ、少女のばらの顔に埃被らぬよう制服翻して覆う。
風が止むと同時に、巨大な何かが陽光を遮る。地面に落ちた影だけ見ると船の形をしている。が、その姿は見えない。
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