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【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -13-

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 否、正しくは“船が無ければ見えるであろう向こう側の景色”を投影してそこにある。クローキング(cloaking)、いわゆる光学迷彩である。
 超高速飛行帆船アルゴ号。クラスでその存在を知る者は彼、平沢と、諏訪利一郎、女の子数名。但し、その彼たちも飛行船型救命隊という認識であり、超常識的な駆動システムや銃器類の存在は知らない。
 風景の一部が切り取られて黒い四角形が出現する。出入り口である。スロープが伸びて草むらに坂道を形成し、中から金髪碧眼の大男が車輪付きベッド、ストレッチャーを押して姿を見せる。
 この船の乗組員である。コールサインをアリスタルコス。
「Hey!Baseball!Here!」
 おい野球!とでも記すか。アリスタルコスは平沢に笑いかけ、スロープから下ろしたストレッチャーの上をバンバン叩いた。ここへ彼女を置け。平沢はうなずき、森宮のばらをストレッチャー上に横たえた。アリスタルコスは直ちにストレッチャー付属のベルトで少女の身体を固定した。以前一度だけ、二人は顔を合わせたことがある。
「Thanks for protecting the princess. Take care and keep up the good work!」
 平沢の手を握り、肩をポンポンと叩く。
「え?何て……」
 平沢は困り顔。
「姫のお守りをありがとな。頑張れよ、野球」
「あ、お。さ、サンキュー」
「You're welcome!」
「じゃあ頼むね。Let's get out of here.」
 彼女レムリアは首を傾けて西方を示すと船に乗り込み、離陸の暴風に平沢を残し、上空へ舞い上がる。

 5

 森宮のばらはうっすら目を開け、やがて異変に気付いてガバッと身を起こした。
「ここ、ここ、へ?へ?」
 周囲をキョロキョロ。仰臥していたベッド両脇にはLEDや液晶画面の明滅する機器類が高層ビル群のようにそびえ立ち、数本の電線と輸液(点滴)のチューブがおのれの身に接続されていると気がつく。
 の、有様を見ている同じ制服の娘。ベッドサイドの仕切りに肘を立て、その手のひらに顎を載せて。褐色肌で小さくポニーテール。
「お目覚め?森宮さん」
「さっきの……えーと……相原……さん?」
 森宮のばらは、夏服ブラウスの胸に安全ピンで留まっている名札を読んで言った。
「はい、3組相原姫子です。体温測らせてもらっていい?」
 体温計を渡すと、森宮のばらは自ら服の下へ手を入れた。
「ここは?」
「えーと、南緯26度10分、西経164度48分」
 レムリアはその辺の画面を見て言った。
「いや、そうじゃなくて。わたし病院は……保険証持ってないから……」
「病院並みの設備持ってますが病院じゃありません。ボランティア団体の飛行船についてる生命保持ユニットというスペース。私の別荘。秒速70キロで海の上飛んでるから下ろすのは無理です」

(つづく)

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