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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -064-

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 日本語も少し強化を図る。EFMMは日本と縁が薄いと書いたが、〝放射線障害〟に関する専門知識は原子爆弾を端緒として日本が先行しており、事故が起こった際は協力を受けられる体制のはずだ。および、日本からの寄付による食料・薬品・資材は実はかなり多く回ってくるが、その殆どが〝日本仕様〟そのままの物品であって、品名やマニュアル類をメンバーが〝解読〟できず、使えなかったりするのだ。自分は多少なりとも読めるわけだが、更に不明点を問い合わせするなど、充実化できれば。
 次は地理歴史。
 理由は単純、〝今〟の前には〝過去〟があり、過去から今への変化は、自然環境が与え場合が殆どだから。
 繰り返される大地震、噴火や洪水、暴風雨。それらはとりもなおさず、救助活動の対象となる。
 その結果見えてきたのは〝躍動する大地〟そして〝つながり〟もう一つ書くことを許されれば〝循環〟。
 大気であれ、海であれ、大地の下であれ、水平に垂直にダイナミックに巡っている。
 船に乗るという行為は、地球全体を一つの視野に収めるというやはりパラダイムシフトを迫った。
 相応しい、か、どうかは判らないが、その視点は、物事考える際の自分の立ち位置を変えたように思う。
 そして時は来た。
 電話が彼女を呼ぶ。
 彼女は応えて部屋を出る。ウェストポーチに必要最小限の応急処置用具と衛星携帯電話。
 及びお菓子も少し。子ども達を相手にする時のみならず、何か食べ物を口にすることは、パニック状態の心を落ち着かせる。
 照らす満月の光を浴びて彼女はレンガの街路を駆け抜ける。街娼さんが客を取る古いビルの脇から運河へ。……この街には、この制度が生きている。
 岸に船有り。
 見た目には運河出発の観光帆船のようだ。この場所を選んだのは、上記した夜の業界ビルから、運河側を見る人は多くないだろう、という考えによる。
 甲板から岸にスロープが渡されてあり、見張りであろう、大男アリスタルコスが腕組みして立っており、太い腕を見せている。

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「用心棒みたい」
 彼女は彼に言った。
「おかげさまで守る姫があってな。さ、乗った」
「はい」
 操舵室に顔を出す。
「お待たせしました。すいません先日は荷物を置いたままで」
 レーダ席に腰を下ろし、イヤホンマイクを耳にねじ込む。
 コンソールにタッチしてトラックボールとディスプレイ群が電源オン。
「構いませんよ。貴女の動く別荘になれればこの船も本望でしょう」
 セレネが笑顔。ちなみに荷物は後日届いた。オリエンタリスは自室でドライフラワーになっている。
「総員揃ったか」
 アルフォンススが高位から訊いた。
「はい。副長以下全5名、所定位置に着きました」

(つづく)

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