魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -121-
船が猛火炎の中に飛び込む。一酸化炭素が多く、油起源の炎と判る。
「俺の顔を見て誇らしそうに死と滅亡を味わえとさ」
アルフォンススが言った。
「船外温度815ケルビンです」
セレネが言い、船外カメラの画角が大きく傾き、船体が横倒しになったことを知る。
「船底のみシールド解除し原子力船と連結」
「アイ」
どん、という衝撃。
「オレには船長をどうにかしたら助けてやるとさ。一緒に戦わないかと」
とはアリスタルコス。彼らは北欧の出自であって、仲間と見られた、ということであろう。
「磁気吸着確認」
「よろしい。INS使用できないため加速3G。大気圏外へ進行せよ。各部宇宙航行モード。相原確認し復唱せよ」
「了解。各部隔壁動作完全。漏洩なし。船内気圧保持、光合成還元システム動作正常、非常脱出カタパルト待機良し。宇宙航行モード遷移」
「宇宙モード。大気圏外へ進行します」
セレネの冴えた声。
宇宙へ出る……レムリアはゆるゆると事態を認識した。
★光合成還元システム:〝光〟を生み出す機関であるから、それを導いて呼気二酸化炭素から人工光合成で酸素を取り出し乗員の呼吸を維持する。
★非常脱出:操舵室だけ船外に射出される。
4
大画面は炎から氷の平原へ、そして青い空から漆黒へ暗転した。
「大気圏外赤道上空高度1000キロ。対地速度7.3キロ毎秒。船外カメラ遮光モード。座標系太陽系モード」
「地球とニュートン均衡。遠心力0.98G相当……レムリア大丈夫か」
レムリアはリクライニングの背中を起こした。大画面に青い球体の一部が弧を描く。青と漆黒の間に挟まれた薄い薄い紙のような大気・雲の沸くエリア。
「原子力船のデータも船に食わせた。捨てろ。なお原子炉は緊急停止状態だが、内部温度は上昇傾向……猶予はないぞ。太陽系外と言ったな。どこにする」
アルフォンススは相原を見。
「ブラックホール。アルゴに命令。天体HDE226868に向けて船外異物を秒速40キロで放逐する。当該天体と本船との相対速度を考慮し適切に加速射出せよ」
「おっと」
相原が船に命じ、ちょっと驚いて舵から手を離したのはドクターシュレーター。命令を受けた船の主コンピュータ……人工知能が自動的に船を動かしている。〝船長〟の命令なのでシュレーターから操舵権を取った。
宇宙空間なので上も下もないのであるが、太陽系の惑星はほぼ同一平面上に並んで公転しており、地球の南北がその円盤平面の上下に一致しているため、便宜上、太陽系円盤の上を北、下を南、と記す。船は原子力船を切り離し、船体を前後逆転させて原子力船の下に入った。船尾を原子力船に向ける。三次元挙動に伴い無数の星が目まぐるしく動き、太陽の光芒があっち行ったりこっち行ったりする。真剣に見ていると〝酔う〟と思われる、特有の気持ち悪さを惹起する。
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -23-(2026.01.07)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -22-(2025.12.31)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -87・終-(2025.12.27)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -21-(2025.12.24)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -23-(2026.01.07)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -22-(2025.12.31)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -21-(2025.12.24)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -20-(2025.12.17)


コメント