アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -098-
「あら。所長さんは殿下のことを……」
「ええ、彼女が子供達に笑顔をもたらした時、それは奇跡の始まる合図。誰もを元気にする奇蹟の姫君、ミラクル・プリンセスってね。我々の前にいるこのキュートな姫君はそれはもう伝説です。マダムがそこまで快復されたのはある意味当然かと。そうかそうか。殿下の魔法の秘密が判ったぞ」
所長は笑みを見せた。
その言いぶりは褒めすぎであって本来照れるべきであろう。というかそんな言われ方をしているのか自分は!。しかし、その言葉には本質的な気付きが含まれていると知り、レムリアはただ「恐れ入ります」とだけ返した。この所長氏は、自分が今回、この施設にこれまで無い物を持ち込んだと理解したのだ。
すなわち自分は、〝お年寄り〟であることを意識した行動は取っていない。ただ、年上に対する敬意は払ったつもり。
でも、それだけ。見舞いついでにひととき楽しんでもらえれば、というエンターテナー。
「企業秘密ですから、バラしちゃダメですよ」
レムリアは小さく笑い、いたずら少女の耳打ち。
一方奥様は戸惑い、
「あら、判らないわ。わたくしには教えて下さらないの?」
「(……)」
その問いに、レムリアは奥様の手を取り呪文を唱える。呪文の詳細は彼女の意により記述を控える。
「今、何て?」
「これで、『奥様は魔女』です。これをお持ち下さい。少し持ち上げぎみに。そうです」
レムリアは渡した一輪挿しを一旦受け取り、奥様のステッキを少し高い位置まで持ち上げてもらった。
「え?でも」
「術式は奥様もご覧になった通り。私と全く同じ要領で」
「術式って……え?本当に?」
奥様はステッキの先で、まず足下を軽くカツンと突いた。それはレムリアがマジックショー冒頭で最初に取った動き。
大理石に弾かれて戻ってきたステッキを、くるりと回転させて天地逆さにする。
結果、ステッキの先から花が一輪。
「あら。でもこれ普通のステッキよ。マジック用に?」
「これで今度は奥様が是非」
「わたくしがマジックショーを?」
「ええ」
レムリアが頷くと、奥様はハッと目を輝かせた。
「これで、わたくしもここの皆さんに魔法を掛けられるわけね」
「おっしゃる通りです」
すると、奥様はいたずら少女の笑みを返した。
「あなたはまた一つわたくしに魔法を使ったようね。あなたが帰ってしまった後のことを考える寂しさが一気に吹き飛んだわ」
「魔法使いですから」
レムリアは笑って、手のひらのひとりぼっちオリエンタリスを、花束に変えた。
「ミッション・コンプリート」
第1部・了
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