魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -104-
セレネが応じる。会話だけ取れば、これから空飛ぶ船が起動するとはとても思えない。
相原がはんてんの袖をまくってパスコードを打ち込む。なおIDカードを持っていれば基本的に船内の行き来は自由である。但し、メンバー以外(要救護者含む)を伴う場合は、指紋/顔/声紋いずれか、そして船長権限の掌握にはパスコード入力を要求する。
船のコンピュータがパスコードを受け付ける。
「通常ルーチン起動シーケンス」
相原は言い、キーボードを押し込んで元通りしまい込み、液晶パネルをポンポン指でタッチ。
なるほどこの男は〝見れば判る野郎〟だとレムリアは納得した。クルマや医療機器でも「こんなの見れば判る」とのたまう男性(や、男の子)がたまにいる。相原学も同類なのだ。そして、それを見抜いた船長も中々と言えるか。最も、船長の場合〝脳波でキカイを見る〟ので判ってしまうそうだが。
「通常ルーチン了解」
「了解」
各員から声が返り、それぞれにコンソールの画面を見つめる。船長アルフォンススはコンソールの片隅に座し、各種データをモニタ。
「順次状況を確認する。ドクターシュレーター。電源状態」
「制御電源安定。主電源準備ヨシ」
「ラングレヌス殿。機関状態」
「呼び捨てにしろ鬱陶しい。GMサイクル動作正常。液体窒素温度52ケルビン。INS予冷装置9ピコケルビン、ゼロ点振動確認。燃料陽電子容量8.87パーセントチャージ。読み替え残容量44.35パーセント」
「アリスタルコス。防御システム」
「透過シールド動作中。作動良好」
「了解。船体制御系動作正常を確認。探知システム状態報告」
探知システムの起動や監視の担当はレムリアである。
「映像装置、探知装置共に問題ありません。船長殿」
レムリアは言い、振り返り、ウィンクして見せた。
最上段座する相原が堂々として見え、ハッとする。一連のセリフは知ってるから言えるのだろうが、中々サマになっているように思える。
椅子に埋もれる小柄な男で、はんてん姿だが。
男を男らしく見せるのは、シチュエーションと発揮できる能力の方程式なのだろう。
「よろしい。機関始動!」
「始動します」
相原の声にシュレーターが喚呼で応じる。握っていた操縦桿の奥手側、フタ付きスイッチを押す。
僅かに甲高い音、擬音に直せばキンと書ける音が聞こえたであろうか。大型のコイルに高周波の電流を与えるため、磁力による振動と音がどうしても生じる。ただ、通常は人体が感知できない高周波で駆動されるため、聞こえるのは始動時の一瞬だけだ。
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