魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -103-
セレネが言った。最初の活動からこっち、レムリアは幾らかセレネと世間話をし、その血筋は中東の失われた王国パルミラに連なると知った。「あなたの日焼けと違って元より」という肌の色と彫りの深い顔立ち、醸すミステリアスな外観は、応じたものと納得したところ。
「わたくしは普段から悲しみの声を拾ってしまい、それで少しでも救えればとこのプロジェクトを立ち上げたのですが、これまでにない、耐えがたい規模の悲しみを感知しました」
「それは、どこから、ですか?」
相原学は大学講堂を思わせる雛段を最も高い位置まで昇りながら訊いた。
「特定は……なぜなら、地球全体を包むように」
セレネは手のひらで大切なものを包むような仕草と共に言った。悲しみを拾うというのはテレパシーの反応であるが、レムリアは目を見開いた。
地球を包む規模?
「悲しみがこの星全体に広がる、あたりですか」
「ええ」
相原学が雛段頂点、船長席の大きな革張りのイスに腰を下ろす。
三面ある液晶の電源が入りID7 M.Aihara〝Captain〟。
「レムリアは?」
相原に振られて。
「私の力はそこまでは……ただ、副長の思いに共感をしています」
「何かありそうだと。大きなインパクトが」
「ええ」
「わかった。なら、通常パトロールのルートで飛んでみよう。何周かすれば地球をほぼくまなくカバーする。どこかで引っかかるはずだ。緊急性は無いと言ってたけど、他に何か感じることは?」
「いえ……ただ、何と言うか、悲劇は1回だけで、以降は余韻がくるくる巡っているだけかも知れません」
「大きな隕石が地球に落ちると、インパクトは1回だが、その際の衝撃波は地球を何回も巡る。そんな感じか」
「ああ、はい。そんな感じかと」
すごい喩えだとレムリアは思った。
「承った。それならそれで、悲しみの大きさに応じた気持ちの残り。専門用語で……」
「残留思念……副長、Psychic Imprintのことです。が拾えるだろうということですね」
「そうそれ」
会話を聞いていたアルフォンススが振り向いた。
「凄いな。相原君。君は超能力をかじっているのか?」
「ファンタジーが好きでその辺の用語を知っているだけで信じちゃいませんでした。この船を見るまでは」
「私には出せない見解だ。君の意見は。君に参加してもらったのは正解と確信する。そのまま起動し巡回航行まで一通り実行してくれ」
「わかりました」
相原はコンソール下の引き出しを引き、現れたパソコン用のフルキーボードに指を揃える。
「えと、じゃぁ、行きますよ」
「はい、お願いします」
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