魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -108-
相原も然り。確か日本は銃器を持つのに色々と特殊な条件が必要。しかも二次大戦の傷跡深く、銃器には〝反平和〟のイメージ色濃いと聞く。そんな日本の青年、相原にこんなもの持たせていいのかと思うが、既に持ってしまっているし、心配を口にしたところではぐらかされるだけだろう。なお、頭のフードの内側はセレネの付けたカチューシャと同じものが仕込んである。このカチューシャの内側はアンテナで、要するに脳波を介して直接やりとりできる。
「そこ滑るよ」
「え?」
背格好でそうと判る相原に言われて、レムリアはスロープから一歩足を下ろして立ち止まる。
べしゃっ……それが足音と感触。まるで雨上がりの水たまり。ただ、ウエアは足までカバーしているから、濡れた・冷たい等の感触は皆無。
雪と氷の白き大陸、南極。陽光は低く、弱い。
「溶けて……」
「るよ」
「温暖化?……この間の氷河もそうだったけど」
見回せば水たまりが幾つも幾つも……それは子どもが泣きながら走ってきた跡のような。
「それでヨッシャ新航路が作れるとか、オレの領土だとか、海底資源を漁れるぞってのが偉大なる人類の考えることさ。環境問題なんかそう言う利権からの目眩まし。クレバスに降りるぜ……普段どうやってんの?こういう場合」
相原は早口で言い、話題を変えて大男二人に訊いた。同時通訳のタイムラグがあって。
「あ?まぁ、こういう状況不明の危険な事態はだ」
アリスタルコスが言い。
「とりあえず不死身が突撃するんだよ。縄梯子用意しとけ」
ラングレヌスが引き継いで、そのクレバスへひょいと身を投じた。
レムリアは思わず腕を伸ばそうとしてやめた。彼の不死身の機序であるが、皮膚筋肉が粘土のようで衝撃を吸収するという。でも幾ら不死身と言われても、見た目はとてつもなく危険で、そして凄いことだ。この連中と一緒にいると奇蹟が当たり前に思えてくる。魔法使いという自分のスキルが霞む。
最もだからこそ集まってアルゴプロジェクトの使命……奇蹟を人の手で自ら起こして命を救う……なのだろうが。
イヤホンにピン。
『レムリア、相原、出番だ』
「了解。レムリア行くぞ。アリス、外敵の確認後来てくれ」
相原は自分がクレバスを覗き込んでいる間に取って来たのか、縄梯子をひと巻き、氷原にガラリと降ろした。
「外敵?……こんなところに悪の組織ってか?」
「今日び人類はどこでどんなバカやってるかワカランてことさ。断層のウラン鉱に水ぶち込んでプルトニウム作ってたバカいたんだろ?」
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