【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -14-
話してる間に、体温計が測温(実際には推定)完了を知らせる小さな電子音。
「はい」
差し出された数値は36.7度。
「ほぼ平熱ですと。びっくりしました。突然失神するから……結論から言うけどあなたマトモにご飯食べてないでしょ」
「え……」
森宮のばらは恥ずかしそうにうつむき、次いでいわゆる“お腹が鳴る”きゅるきゅる言う音。
姫子……この船でのコールサイン“レムリア”は、ベッドの下に前屈みになって顔を入れ、扉を開け閉めした。
併せてベッドのマットレスが動き出し、上半身部分が立ち上がって椅子の背もたれになると共に、頭の上から金属アームが板を抱えて降りてきた。
おっかなびっくりという感じで森宮のばらが見ている間に、ベッド両脇の手すりの上に板が乗り、テーブルのセット完了。
レムリアは少しの間森宮のばらの表情を見、その指先に嵌めてあったパルスオキシメータのセンサを外した。
「酸素も脈拍も良し。起こしたけど貧血もないね。どうぞ。召し上がってください」
デミグラスソースのハンバーグステーキプレート。
「炭水化物はパンかライスが選べますが?」
「あの私お肉は……」
レムリアは目の下をピクリと動かしたが。
「大豆ハンバーグですからアレルギーが無いなら」
大嘘。
「え、あ、じゃぁ……ご飯で」
「人体はタンパク質で出来ていますから、タンパク質を食う必要がある。ただそれだけなのに拒否すると言うことは死ぬと言うことです。私にはそういう思想が理解できないし、人間も食物連鎖の一貫を構成している点に特別なことはなく、偉そうなご高説は日々食べるものもない貧しい地域の人たちにとても失礼だと思います」
話しながら再度ベッドの下をゴソゴソし、レンジでチンのパックご飯と、お湯で溶いた粉末ポタージュを並べる。白いプラスティックのナイフとフォーク、それにスプーン。
「はいどうぞ。とやかく言いません。というか今のあなたは食べなきゃダメ。高熱の原因は栄養不良です」
「はい……」
自認があったのだろう。森宮のばらはハンバーグを少し口にし、「おいしい」と声に出して猛然と食べ始めた。
「おいしい……おいしい……」
涙ぽろぽろ。どれだけ我慢していたのだろう。健康保険の話は帰化に際して聞いているので仕組みは知っている。なので保険証がないというのは彼女の家庭が充分に機能していないことを示唆する。それは彼女の栄養不良に至るほどの食事量減少と何らか同期していることであろう。
じっと彼女を見ているのもどうかと思い、紅茶を口に含み、機器の画面のデータを見たり。
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