魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -107-
クレバス:crevasse。氷の割れ目。
SARが検出した地形の輪郭線を正面スクリーンの氷原に重ねる。
肉眼では判然としないが〝筋〟が画面を斜めに走っており、救難システムの軌跡100メートルはそこで途絶している。
クレバスに落下しシステムが壊れたか、氷によって電波が遮られ、信号が途切れた。と判断して良さそうだ。
「降りますか」
相原は言った。
氷原下に降りて捜索するの意。
「相原、君が行ってみるか?超能力を要する指示に関する限り、君の方が|上手《うわて》のようだ」
アルフォンススが言い、様子見に座っていたコンソール末席を立ち上がる。
「船は私が見よう。テレパスも二手に分かれろ」
「では私が外で」
レムリアは言われる前に言った。
「オーケー。捜索に当たれ。レムリアは救護用具一式、男どもは銃器携行だ」
「降下完了。構体着氷。不安定なので下船注意」
シュレーターから報告。
「着氷確認。では総員耐環境ウェアを着用し下船集合。支度は40秒だ。その先は相原が指示せよ。必要に応じて介入する」
「了解」
男達はウェアと銃を取りに船首方向通称〝武器庫〟へ。レムリアは女の子ということで個室を与えられており、入ってクローゼットから一見ウエットスーツに見えるその万能ウェアを取り出す。彼女は季節よらず普段着はTシャツ短パンなのだが、これは薄着の方が機能的だからであると共に、殊この船に乗っている限り、これの脱ぎ着が楽だと思ったからである。ローティーンの娘にしてはオシャレに気を配らないと自覚してるし、そんな自分でも女だという自覚はあるが、その前に使命持った人間であって、
女の子っぽいよりは飾らずにいたい。
ウェア着込んで個室奥の床板を開くと滑り台が顔を出す。そこから降りると船倉部に組み込まれた医療室……生命保持ユニットに出る。アルゴ号は本来宇宙航行用の船であり、ここは観測機器類を積み込むスペースと書いてあった。
そこに非常持ち出しよろしく用意してあるザックを背負う。中は心臓電気ショックで知られるAED(自動体外式除細動装置)を始め、各種バイタルセンサ類と応急救命用具、薬が幾つか。放射線障害用のヨードも入っている。
舷側通路に上がり、昇降口からスロープを下りる。男達はウェアを着たうえゴーグルを着用、ほぼ、潜水服状態で体格と目しか判らない。それぞれ長大な銃器を担いでいる。
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