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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -096-

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 降参だ。この青年は〝誰かのために〟なのだ。基本的に。
 ならば。
「セレネさん……副長。彼を、私たちと共にあるように……不可能でしょうか(……I have a request for the sub-captain. Would it be possible for us to have him join us?)」
『いえ、特に(I have no objections.)』
「船長(Captain)」
『全部教えておいて、断る理由があるかね?(We've told him everything, there's no point in saying no.)』
 レムリアは相原学を見た。であれば、彼を迎えられる。なぜなら、誰かのために、それこそがあらゆる奇跡の始まりの動機になると思うから。
「私たちの仲間に……アルゴ・ムーンライト・プロジェクトへようこそ」
 レムリアは両の手を相原学に差し出した。
「誰かのためになれ。そう言われて育った男の子の夢を叶えろと」
「そうです」
 相原学は、レムリアの両手を、その大きな手のひらで包んだ。
 レムリアは目を見開いて彼を見返した。自分より大きく、なおかつ熱い手のひらは初めてだ。
「必要な物を準備して、また、迎えに来ます。必ず来るその時に」
「判った。まるで予言者か魔法使いみたいだな」
「魔女ですから」

 20

 温泉療養施設。キームゼー。
 医療宿泊棟は大理石をメインとした環形の構造物であり、中央に噴水を備えた庭があり、環状の回廊が囲み、その外側にリハビリやレクリエーションなどの部屋が並ぶ。
 回廊には車いすのお年寄りが多い。
「このような、ステッキの先端から花が咲く、というのはありきたりで面白くないので……」
 流暢なドイツ語は少女の声。
 声の主はTシャツにジーンズという軽装で、回廊でステッキを手にして立っている。回りをお年寄り達が囲んで眺めており、あたかもストリートマジシャン。
 その少女を見守る、優しい目線ひとつ。
 紫の帽子をかぶった高齢の婦人。ステッキを支えに立っている。
「奥様、その帽子を取ってみて下さい」
「これですか?姫様」
 彼女を姫様と呼んだその婦人は、もう結果が判っているかのように、微笑みながら頭の帽子を手に取った。
 くるりと返すと、中からヘレボルス・オリエンタリス一輪。
「あらまぁ」
 衆目から拍手。
 そこで少女……レムリアは持っていたステッキを折りたたみの傘よろしく縮め、再度伸ばす。すると、ステッキは一輪挿しの花瓶に化ける。
「花瓶にしてみました」
 更に拍手。

(つづく)

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