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【理絵子の夜話】空き教室の理由 -80-

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 そのあゆみちゃんが守ろうとし、転落していった少年こそ、目の前のマスターだったのだ。
「正樹怒ってるの?」
 担任顔の二宮あゆみが小首を傾げ、眉をひそめる。
「そうじゃない。怒ってはいない。怒ってないよあゆみ。でも、そういうことを言ってはダメだ。オレが過ちを犯したことに変わりはないし、それ自体を後悔もしていない。あゆみの気持ちは嬉しかったが、罪の償いは償いだ。オレはむしろ、お前がオレと切り離されて良かったと思ってる」
 マスターの言葉に、担任顔の二宮あゆみは瞠目した。
 自己を否定されることに対する精神的ショック。
「そんな……正樹まで」
「誤解するな。だからオレはそれ以降、一人だ。意味が判るか」
 マスターは首にかけていたペンダントを外した。
 メッキの剥がれたハート枠の中の古びた写真。
 バイクに乗った二人の写真。
「オレは罪を償うために生きる。人ひとり人生台無しにした。それは事実だ。代償はその人がある限りオレが償う。だから今すぐお前の所へは行けない。だけどオレにはお前しかいない。長いけど、待っててくれるか?」
「うん」
「優しいあゆでいてくれるか?」
「うん」
「ありがとう。じゃあ、あとでな」
「うん。またね。正樹」
 それは一聴しただけでは、単なる恋人同士のデートの終わり。
 但し、次回は何十年も先。
 消える……理絵子は感じた。二宮あゆみは満たされたのだ。あっさりしすぎているように思うが、彼女にとって心残りは何ら会話なく彼と引き離されたことであり、彼と心が繋がっていると確認できればそれで充分なのだ。
 心のみで彷徨う人は、満たされれば、しかるべき地へ行く。そして心のみの存在に、時間は意味を持たない。
 さすがだ、と理絵子は思った。マスターには肉の身があろうと無かろうと二宮あゆみであり、彼女の心理がどんな状態にあり、何が必要か、即座に判るのであろう。
 心で結ばれた二人。対しそれを引き裂いた眼前のこの男の方は……。
 担任の身体から、がっくりと力が抜けた。
 失神し、コンタクト・セッション終了。すると、己を咎める存在がいなくなったせいであろうか。眼前の男内川が突然笑い出した。
「ハハッ。とんだ茶番を見せてもらったぜ。で?その隠した証拠とやらはどこにあるんだ?」
 あぐらをかいて一同を見渡す。

(つづく)

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