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魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -106-

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EーPIRBイーパブ〟と呼ばれるシステムがある。Emergency Position Indicate Radio Beacon:非常位置指示無線標識。タイタニックで一般化したモールス信号SOSの代わりに導入された船舶用の仕組みである。地球周回衛星コスパス・サーサットを介して遭難位置情報を発信する。カーナビゲーションで知られるGPS応用の一種で、当然全地球規模。
 テレパシーよりも先に、それを拾ったと船のコンピュータが告げ、自動航行でその場に近づく。
「南極」
 大画面の船外画像には「E-PIRB位置情報による」と注釈の付いた赤い「+」のマーク。子画面に地図があって南緯88度。
 しかし南極大陸内奥の氷原であって、船が浮かぶ場所には思われず、また当該船舶の姿もない。
「その後ビーコンは?……レムリア追尾できるか?」
「はい……待って」
 レムリアはコンソールに取り付いてタッチパネルを操作。信号のアドレス。位置と時間。
「20秒間にわたって発信しながら西南西へ移動。そこで途切れています」
「移動距離は」
「100メートル」
「誤差に近いんじゃないのか?……テレパシーでは」
 相原はセレネを見た。
「いえ。実際の遭難事象はもっと前だと思われます。また、過去認知を試みましたが、悲鳴や危機感は察知されないので、恐らく、恐怖を感じるヒマすらなく何かに巻き込まれたのではないかと。レムリアはどうですか?」
「何も感じません」
 思わず敬語で答えたが、そこには船長がいるのではなく、はんてん姿で腕組みしながら頷いている相原がある。
 感覚がズレる。ただ、堂に入っていて、初めてにも関わらず手慣れた感じを受ける。全容を把握して全機能を使いこなしているというか。
 確かに彼には特殊な力……超能力はない。ただ、この船と〝相性〟が良いのかも知れない。否、この船とあることによって〝覚醒〟したか。
「硝煙反応、SAR」
「あ、はい」
 レムリアは言われるままに操作。自分で考えるより指示待ちになってしまっている。この男の発想と判断を無意識に信頼している。
「硝煙?撃たれたってのか?」
 アリスタルコス。
「この海域で海生哺乳類の密猟って話を聞くんでね。で、捕鯨国の我が国を毎度疑うと」
「誤射か……え?見られたから射殺しようとした?どっちにしろそんな銃砲で撃たれてビーコン飛ぶなら船の木っ端か血痕くらいあるだろ」
「あのいいでしょうか、クレバスがあるようです」
 レムリアは男達の会話に声を挟んだ。

つづく)

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