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魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -119-

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 クジラの〝声〟は、人間が聞こえる(その振動を感じ取れると言うべきか?)周波数下限、20ヘルツより更に低い領域まで使える。
 それは唸りであり、応じてプールの波が様相を変化させる。水面に特定の模様が出来るほどのエネルギ……すなわち大音量と言うべきボリュームであるが、人間には音として聞こえないからそうと判らない。
「おう」
『なるほど』
「ASKとは古風な」
『搬送波が16ヘルツでは振幅を使うより他あるまい』
 画面を見ていた相原と、アルフォンススと、それぞれ。
「そいつはクジラの声に情報を載せて送受信する回路だ」(ASKはamplitude-shift keying:振幅偏移変調)
『今の声でこちらのシステムが反応した……子宮に何か詰め込まれていると言ったな』
 アルフォンススのカメラに映っているもの。コンソールと思しき画面とスイッチとランプ類。拘束されているのにニヤニヤ笑う金髪碧眼の男達。次いでマイクが何か拾う、びくとりあ・あど・くれた……。
「白亜に勝利?」
 レムリアはそれをラテン語と捉えて口にした(Victoria ad CretaまたはCretamか)。
「船長、アリス、ラング、戻れ。罠が動くぞ」
『それが良さそうだ』
 男達の認識。降参と見えて勝利を叫ぶ理由。
〈だめ……〉
 クジラの意思。意図せぬ陣痛。男達が甲板に飛び乗る。
「自爆するぞ。浮上」
『アイ』
 船が湖の穴から外へ出た。その直後。
 激しい痛みと悲しみと共に、回遊プールから水柱、続いて火の玉が上がり、〝管制塔〟がタロットの〝塔〟のように火炎に覆われる。すなわちクジラの身体に埋め込まれていたものは。
 何とむごいことを。
『私だ。今の爆発で原子力船の制御が切れた。意図した暴走かも知れぬ。核事故を回避せよ。我々が船内に戻り次第火炎中に突入。相原、君ならこの核物体をどうするね?』
「下に潜り込んでエンジン推力で太陽系外へ放り出す……レムリア大丈夫か」
 相原から見て、レムリアは自席で身体が斜めに傾いて肩で息をしている。
 テレパシーで心と心繋がった状態で相手の命が奪われた。その衝撃が心身に与えるダメージはまるで自分自身のことのよう。
「ああ、彼女はわたくしが。レムリア、私のシートへ来て横になって……船長、宇宙放逐されますか?任務継続ください」
 セレネの台詞をレムリアはただ聞き流している。目の焦点が合わない。思考が充分に紡げない。はぁはぁと荒い息をし、脂汗をボタボタとコンソールに足らしている自分がいる。肩を抱かれてよろよろ歩く。

(つづく)

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