【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -16-
「遊歩道歩いてて、クロちゃん、じゃない、ヒロスか。シャーってやってたから、大丈夫だよって」
つまんで取りのけた……と、森宮のばらはジェスチャーで示した。
「まさか、それのこと?」
「でしょ。お、こいつヘビより強え、勇気あるんだ。て認識したと思うよ」
すると、森宮のばらは小さく笑んだ。
「初めて笑ってくれたね」
「虫に関することで喜んでもらえたの初めて」
ちょっと意外な回答。知る限り虫好きスキルが発揮されるのは、授業中に現れる等、パニックを惹起した虫に対し、有害無害を見抜き、殺す・取り除くなどで周囲の心配点をクリアにする行動だと思うが。
「嫌がる虫を殺してあげたとかマンガなんかでよく見るけど?」
「私、虫殺せないから。この間も教室にゴキブリがうじゃうじゃ出たことがあって、殺したらかわいそうだって言ったら、バカヤローって」
虫も殺せない方か。ならば。
「菜食主義っぽいこと聞いたけど、生き物全般殺せないってこと?」
「いや……それは……また、別で……」
森宮のばらは再び目線をずらした。
「誰にも……言わない?」
うつむいて上目遣い。
「言うくらいならあなたのお願い無視して救急車を呼んでます」
すると、少しあり、森宮のばらは意を決したようにスッと息を吸い。
「私の家、川のそばのアパート。通称、幽霊ダンジョン。聞いたことある?」
ないが、思い浮かべたイメージは捉えた。丘を通る遊歩道は、スーパーマーケットのある交差点のそばに出る。その交差点から北方、多摩川へ向かって数段、河岸段丘になって下がっている。その段丘最下段に大きな墓地があり、墓地のすぐ脇、堤防そばに、古びた2階建てのアパートがある。
「そんなひどい言い方されているとは知らないけど」
「母親と二人暮らし。誰も呼ぶな、遊びにも行くなって。おもちゃもゲームもないし、遊びに行くと欲しくなるからって。でも、川のそばで草むらだし、お墓には木が沢山生えてるから。虫はいっぱいいた」
「虫と遊んだんだ」
レムリアは立ち上がり、森宮のばらの背後に回った。
「うん」
楽しかった虫たちとの話を聞きながら、レムリアは森宮のばらの髪を結い直す。三つ編みを一旦解き、ブラシを通し、再構築。
「編みゴム自分の使っていい?だいぶ伸びてる」
手品の要領で手のひらに出して見せる。透明な石がキラリ。
「あ、綺麗。いいの?」
「ボランティアでこういうことよくやっててね。差し上げます。そうか、それだけ虫たちと楽しく過ごしたら、虫けらつって殺すのは抵抗があるか」
「相原さん……だっけ、虫は平気なの?」
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