魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -120-
男達の会話を聞く。クジラは、その非常に低い周波数の〝声〟を使い、実に1000キロ程も遠く離れた仲間とコミュニケーションが取れる……うん、そう。ここで行われていたのはその特性を使用したクジラテロリストの開発であろう。音波を電波のように用い、クジラの神経回路を電気でコントロール。海から潜水艦のように目標へ近づき、クジラの子宮に抱かせた爆薬を〝生み出させ〟たり、そのまま起爆する。このプールにおいては管制塔のようなところで制御している。現在ただ今はそれが露見したので自爆・破壊した。
命の冒涜という以外、表現のしようがない内容と目的の悪辣さ(レムリアは知らぬようだが、犬を使った類例は二次大戦や21世紀のイラク戦役でも見られた)。
「吐いて。息を吐いて。そう。過呼吸気味です。ひっひっふー」
額の温感で気がつくとセレネの手のひらがあり仰向けに横たわっており、〝ラマーズ法〟の呼吸リズムを自分に言い聞かせている。
息を吐くと、額の手は自分の両頬を包むように触れた。声は出ないが頷くことは出来る。ええ、はい、何とか。
ベルトを着けられ、毛布を被せられ、セレネがその身に纏うローブを翻して歩き去る。
「総員着席しベルトを装着せよ。船内全隔壁ロック。本船はこれより原子力船を主加速コイルの磁力を用いて本船に吸着、そのまま大気圏外へ放逐する。監視モニタは副長か。対放射線ゲインを上げ、イベントディテクタを集中せよ」
「はい」
セレネが画面にタッチペンを立て、カツカツと音を立てて操作。相原はその隣、舵持つシュレーターとの間の席に移動した。船長席はアルフォンスス。みんなシートベルトを装着。
「光圧シールド。火炎内へ進行し船体を左舷90度横転させ、加速コイルで原子力船を吸着せよ」
「アイ」
アルフォンススの物言いは船体を横倒しにして原子力船にくっつけというものだ。船体において人の居住空間、すなわち操舵室、救命ユニット、船長、副長およびレムリアの個室は、球形または前後方向に伸びた円筒形で、磁力により浮いている。このため船体が傾いても居住空間の向きは一定に保たれる。ベルト装着指示は万が一。
主加速コイルは燃料陽電子(当初反水素だったが、貯蔵に難があるためこのミッションから陽電子に変更)に、空間中……すなわちそこいらの通常の電子を引きずり込んでぶつけるための強大な粒子加速器のこと。船体という限られた長さで加速距離を稼ぐため、らせん形になっており、かつ強大な磁力を発生する。
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