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魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -100-

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『はい。だからこそお力をお借りできればと。詳しいことは船に乗って頂いてから話した方が良いかと。そちらに向かってよろしいですか?』
「ちょっと都合が悪い。大学にいるのでね。〝それ〟を降ろすのはさすがに。帰宅して用意する。準備できたら連絡する。で、いいかな。それとも緊急?どうぞ」
『急いでいますが緊急と言うほどでは。では連絡をお待ちします……どうぞ』
「了解スマンね」
 折りたたみの端末を閉じたところでゼミ室のドアが開く。
「おい相原」
「プレゼンは直してサーバに入れておきます。あの……叔母の体調がちょっと……今日は引き上げさせていただきます」
「待て相原……おい!」
 相原学は会釈をし、廊下に並ぶロッカーの扉を開いて私物を取り出し、肩掛けカバンに首をくぐらせながら走り出す。大学キャンパスと最寄駅の間はスクールバスであるが、丁度いい便がないと判って駅まで走る。カーディガンを振り乱して1.5キロを走り続ければ春先でも汗だくだ。電車にバスにと乗り継いで、自宅へ戻るのに小一時間。
 着替えて、天体観測と称して再度外出する。歩いて5分の距離を走り、四阿のある公園の草むらに到着。夕暮れ空が夜の近づく雰囲気を漂わせる時間帯。うそ寒く、日の陰った辺りは暗く、背後にそびえる高層アパート群はそうした外界と一線を画すようにみな窓を閉ざしている。人こそ多いが人の気配はない。まるで公園だけ取り残されたよう。
 相原学は電話機を手にした。衛星電話に掛けるには国際電話サービス経由で発呼することになる。
「この間と同じ場所です。どうぞ」
『3分です。暴風が吹くので注意してください』
 少女の声に相原学は通話を切り、暮れ始めた空へ目を向けた。西空低くにいわゆる三日月があり、そばに白っぽく土星が輝く。とはいえもちろん、その星がそこにあると知っているだけで、肉眼でリングが見えることはない。
 その視界に真っ直ぐに伸びてくる光条。一見すると流星であるが。
 相原学の頭の上でピタリと止まる。
 静止したそれは間近で見るシリウスという印象を彼に与えたようだ。シリウスは次第にその光芒を強くしながら、大きくなりながら、周辺を白っぽく照らし始める。
 そしてゴッと音を立てて突如暴風が光芒から直下へ吹き降り、地面にぶつかって周囲に広がる。芽生え始めた短い草たちが吹き倒され、土埃が舞い上がり広がる。
 暴風が収まり、目の高さの空間に突如、四角形に切り取られた黒い部分が出現する。

(つづく)

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