【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -15-
ひとしきり口を動かし、完食し、森宮のばらはハッと気付いたかのようにレムリアを見た。
「ごめんなさい私ったら無遠慮にガツガツ食べてしまって………」
「いいよ。食べて欲しくて出したし。森宮が相原と一緒になったら気絶して運ばれたなんて言われたら困るし。ただ、そんな訳であなたは今行方不明のお嬢さんなので、帰るにしても口裏合わせをしておく必要があります。少し話聞いていい?」
食器を下げて(ベッドの下は床下からせり上がって来るストッカー・保温器・加熱器=電子レンジである。食器は衛生管理上使い捨て)、テーブルをリフトアップすると、森宮のばらは視線を下方に外した。そこには船外カメラの映像を映す液晶画面がある。高速で流れゆく海洋と、珊瑚礁に縁取られた緑の島々。
「私にどうこうあっても、誰も心配なんかしないよ」
吐き捨てるように。既に知っているかのように。
「私には当てはまらなかったみたいでよ?のばらさん」
「……ねぇ、これ、飛んでる?」
森宮のばらは答えず、そう訊いた。“飛んでいる”ことの頓狂さはどうでもいいようだ。夢心地と言うべきか。
「ええ。飛行船ですから。巡航速度はマッハで言うと200。今は一回りしてポリネシア辺りかな?だから学校の誰も聞いてないよ。親御さんも聞いてない」
口を開くのを待つ。辛いことを無理強いする趣味は無い。
「クロちゃん。あなたに懐いてたね」
「クロ?ああ、ネコのことか。彼はヒロスって呼んでる。もう、あなたを仲間と認識したから、そう呼べば来ると思うよ」
「ヘビがいたから、何度もおいでって言ったのに」
「あなたが毒ヘビを制していたことは、彼は認識していたと思う。ただ、自分が逃げちゃうとあなたが毒ヘビに何かされると思った。だから逃げちゃダメだと思って対峙してたんだよ。彼も男の子だから」
森宮のばらはレムリアをゆっくり見上げた。
「私を守ろうと?」
レムリアがネコの意思を理解できること自体に違和感はないようだ。それは森宮のばら自身もある程度、動物、それこそ虫であろうか、所作から意図や気分を見抜くことが出来ることを意味しよう。
「そう。以前彼のピンチというか、驚いた原因を取り除いてあげるようなことをした?」
「恩返しされるようなってこと?」
「そう」
森宮のばらは小首をかしげて少し考え。
「セスジスズメってヘビに擬態した大きな蛾の幼虫がいるんだけど」
森宮のばらの思い浮かべたイメージを見ると、自分の指より太くて長いイモムシだ。黒い胴体にヘビに似た目玉模様がズラズラ並んである。虫嫌いの人には悪夢のような存在であろう。
(葉っぱにくっついてるヤツもそう)
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