魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -132-
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ゾンビ兵の注意を引くために。
一瞬でいいからその動きを止めるために。
彼がその銃FELを撃つ場合、引き金を引く動作は必要ない。電磁的に連結された銃器は彼の身体の一部であり念じるだけで良い。
果たしてゾンビ兵は動いたアルフォンススに気付いて(生き物ではないので反射であろう)、目を向けた。
その刹那。アリスタルコスは両手の指をゾンビ兵の目玉に突き立て。
生命反応のないゾンビ兵をFELから無数のビームが走って穴を穿ち。
行動不能に陥ったところで、ラングレヌスを襲っていた方に背後から殴りかかる。2人がかりでタコ殴りだが、殴ってダメージというより、衝撃で少しずつ組織を削り取って行く作業に近い。ゾンビは双子にそれぞれ片腕で対応した後、何と目潰しを食らった片方の〝身体〟を盾に取り、あまつさえは振り回し始めた。
そんな男たちの時間稼ぎの間に、レムリアは相原の腕からレールガンを手にすると、うつ伏せで銃底を肩に当て、〝無照準防衛発砲〟で引き金を引いた。寝そべって撃つスナイパーの見よう見まねだ。パンと音がし、反動が肩に食い込み、身体が後ろへズッと動く。が、アルミの塊は暗幕と窓を一気に貫通して外気を呼ぶ。
これで初めて銃を扱ったことになる。船の銃器は人を撃てない。それでもどこか抵抗があり、忌避感を持っていたもの。
だが、たった今、それは使うべきもの。こいつらは〝救助支援機器〟。
今使わずにいつ使うのだ。レムリアは立ち上がり、足を前後に広げて踏ん張りを利かせると、その引き金を引きっぱなしとし、要するに闇雲にアルミの弾丸を撃ちまくった。
フロアの窓の前後あちこちをドカンドカンと音を立ててアルミの塊が打ち抜き、強化ガラスのようで粉々に割れる。吹き込む風が暗幕を翻して外界の色をもたらし、ついでに天井に向けてもぶっ放して陽光を導入する。
「少し残せ」
アリスタルコスに言われて夢中になっていたことに気づき、指を離す。コンクリ片が散りしだき、今や室内は場違いなほど爽やかな海風が吹き抜ける状況。二酸化炭素は吹き流され、あっという間に酸素濃度が20%近くに上昇。
ゾンビ兵は無数の穴からじゃぁじゃぁと青い漿液……保持の薬液であろう……を吹き出し、その全身からは急速な腐敗進行によると見られる煙が上がっている。急速にドロドロした何かになって床面に広がり、固い部分……要するに骨格だけの状態に変わって行く。ラングレヌスの相手も同様に煙を上げて軟体化を始め、程なくその動きが止まった。
元々腐っていたモノがその元の姿に戻って行く。
(つづく)
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