魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -151-
「殊勝でよろしい。そのまま何も見るな」
看護師は相原に命じると、傷の状況をチェックし、体温を測るように指示した。
その間相原は微動だにしなかった。
はんてんを取ることが許可されたのは、体温計が測定終了の電子音を鳴らした後。
看護師はレムリアから体温計を受け取り、覗き込んだ。
37・5度
「七度五分か、傷深いからまあそんなもんだろうね。じゃ食事持ってくるから。そうそう、あなたカルテ作りたいんだけど名無しのゴンベさんなのよ。はんてんの騎士はフルネーム知らないって言うし……日本人じゃないんだって?」
「ええ、私は……」
言われて思い出す。彼は自分が“魔法少女レムリア”としか知らない。
「いいよ、あとで。ひとまわりしたらあなたの持ち物も持ってくるから、その時で。おいはんてんナイト、不適合の注意事項は覚えてるな。頼むぞ」
「え?あ……」
相原が反応する前に看護師は姿を消していた。
レムリアはくすくす笑った。
「面白い人だね。あんたもね」
「そうかぁ?でもここの看護師万事こんな調子だよ。結構しんどい仕事のはずなのにいつもニコニコしててそれをおくびにも出さない。ここを指定した理由のひとつ。滅法明るいべ?不安な気持ちにならない」
「指定?選んだの?」
「まぁね。オレなりに最高の病院と信じて。……だからあまり言わすなそういうこと」
レムリアが覗き込んだら相原は照れた。
ずっと面白い。
「それで、だね」
相原は話題を変えた。照れ隠しだ。
「はい?」
「めまいとか、どこかカーッと熱い感じがあるとか、ないか?」
相原はレムリアの手首を取って脈を診た。
くすくす笑いは傷に来る。その脈絡の無さ、その唐突さ。
多分看護師が言い残していった“不適合の注意事項”に基づく質問だとは思うが。
何も話題が無かったらどう話を持っていったのだろう。
不適合?
「あのー、大変恐れ入りますが、ドクターに言われたことをそのままお話し頂いた方が、逆に手っ取り早い気がしますが。あなたが間違った理解をされるとは思いませんが」
レムリアは言った。自分の身体に予見される変調なら、申し訳ないが専門外の相原を介すより自分が直接意識した方が多分。
「400CC」
相原はレムリアの腕を指さして言った。
何その婉曲すぎて螺旋状態の表現。
「え?」
「やはりそれでは判らんか。俺の血が少し」
輸血されたのだ。レムリアは理解した。
ちょっと待った。
理由は判らぬ。輸血なんて茶飯事であって驚くことでは無い。対象が自分と言うだけ。
なのに、激しく動揺している自分がいる。
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