魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -129-
しかしすぐ落ちるわけではない。エレベータはワイヤが切断すると、ケージの振動防止に設置されている、〝ガイドレール〟を締め付けるブレーキ装置が作動して停止する。金属同士の接触するガツンという音が聞こえ、次いで擦れるキーキーという音を立て、エレベータケージの急停止を教える。
屋上と3階の間。ただ、ケージと重量バランスを取っているカウンターウェイトは落ちたようだ。ドーンと残響を伴い若干振動する。
「テレパス」
「誰もいないようです」
レムリアは即答した。
「相原、銃を変えろ」
「プラズマ?」
「そうだ」
ラングレヌスが相原と銃を交換。ラングレヌスがプラズマ。相原はレールガン。
「オレはコイツを落とす。お前らは先に行け」
ラングレヌスはそう言うと、ドアパネルの穴をもう少し拡大し、そこから中へ、すなわち途中で止まったケージの上へドンと飛び降りた。衝撃で少しだけ動いて、噛んだブレーキからギャッという嫌な音。
『生命反応、武器、ロックオン反応なし』
「任せた。行くぞ」
アルフォンススの指示で階段を駆け下りて行く。階段はエレベータシャフトに隣接して配されており、男達は一段抜かしで飛んで行くよう。アリスタルコスに至っては最早姿が見えない。ただレムリアも身軽さが奏功してか、アルフォンススの巨躯を見失うほどではない。
二酸化炭素が濃度を上げて行く。
3階のドア前。エレベータシャフトの中で発砲音がし、爪で黒板を擦っているような、耳に痛い金属音。
彼が火の玉でブレーキシステムを溶解させ、ケージがガイドレールと擦れながら動き出した。
『3階エレベータのドアを破る』
金属音が通過し、火の玉を受けた3階のエレベータドアが円形に赤熱溶解し、突き破ってラングレヌスが転がり込んでくる。
エレベータケージはガイドレールを外れたようで、あちこちガンガンぶつかりながら落ちて行く。
「熱いぜ」
ウェアに付いた溶けたドアのカケラをぱっぱと払い落とす。ただ、その動作は、してもしなくてもいいような、マンガじみたオーバーアクションに見えるのは、彼の特性もあろう。
下でドンと落下音。ちなみにエレベータは落下事故の最後の手段として、最下部に大きなバネと衝撃吸収用のダンパ装置が付いている。
イヤホンにピン。
『衝撃と電力の急峻な変化を検出。大丈夫ですか?』
「エレベータを破壊したためかと」
『了解』
ドアに向かって銃を構える男達。ドアは相原の認識を借りると〝半導体ラボ〟のような気密性の高い開き戸のようだ。窓のない一枚板で、なるほど隙間は空気の出入りが感じられず、中から光が漏れてくるようなことはなく、向こう側、室内は暗いとみられる。
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