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魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -130-

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「何があると思うね?」
「とりあえず、誰かいる感じではありません」
 レムリアは答えた。予感というかテレパシーの囁き。ここに、アルフォンススの言った〝自分を必要とする深刻〟は〝無い〟のではないか。
「とりあえず、ぶっ壊せ」
「上等。破壊と同時に全員突入」
 アルフォンススが指示し、ラングレヌスが外部からの侵入時と同様に火の玉でロックと開閉機構を溶かし、アリスタルコスとアルフォンススが体当たりしてドアを外した。
 2人は銃を構えるが中は予想通り真っ暗。
 それは、違和感が増幅する一方の静寂。
「典型的な罠だな」
 アリスタルコス。レムリアはテレパスを可能な限り感度を高めた。ここには〝人体〟がある。だが、〝命〟はない。ゴーグルの暗視モードで多数ベッドがあり、そこに〝人体〟が多く並んでいると分かる。だが所詮古いモノクロ写真のような見え方。
 刹那。照明が灯って明るくなる。それは暗視装置を経由すると目を射る照度になる(つまり目潰しになる)のだが、ゴーグルは一瞬遮光してそれを防ぎ、徐々に視界を明るく変えて行った。
「言葉もねぇぜ」
 ラングレヌスが言い、全員で呆然。
 暗幕で遮光された中に並ぶ多数のベッド。それらは水槽のように四角く透明なケースが被せてあり、中で苦悶の表情のまま息絶えた人体。
 実験を受けた人体はそれぞれ身体の各所に何らか〝繁殖〟させられ、ひどい壊死、腐敗などを呈していた。
 彼らを絶命に至らしめたのは実験の結果ではない。高濃度の〝二酸化炭素〟こそは。
 〈セレネさん〉
 〈ええ、この事象と思われます〉
 大きな悲しみの正体。そして〝急ぐ〟ことを求められなかった、及び、自分の力など必要ない、理由。
 その時。
 感度を高めたテレパシーが相原学の違和感を捉える。背後で〝ぺちゃ〟という、腐った果実が固いところに落ちたような音がした。
 誰かが、何かが、いる、とはテレパシーは言ってない。
『オーディオマニアだからさ』
 個室で聞いた話。彼は聞こえたのだ。レムリアは結論し振り返る。より一瞬早く、相原が自分の後ろでレールガンの銃身をナタのように振り上げた。
「この化け物め!」
 ゴリラのような〝何か〟が、自分を背後から殴ろうとしたところへ、相原が身を挺したのであった。
 応じて彼は殴り飛ばされる。耐環境ウェアは戦闘に備え、ラングレヌスの肉体構造を模して防弾である。銃弾を受けた場合瞬間的に硬くなって貫通を抑止し、運動エネルギは波紋のように広がって吸収される。だが丸ごとどこかに叩き付けられるのは話が別。

(つづく)

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