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魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -124-

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 相原が淡々と作業をするのをぼーっと見る。ハサミのような工具(ニッパー)で樹脂成形のプラグを切り落とし、ケーブルを左右に割いて二股にし、刃の間にたくさんの穴が空いたペンチのオバケのようなキカイ(ワイヤストリッパ)で噛むと、被覆が剥がれて芯線である銅の撚り線が露出。一方でプラスチック製の〝プラグ部分だけ〟の部品を手に取ると、ドライバーでねじを回して中を開き、剥き出した芯線をひねって〝?〟型にする。コンセントに刺される電極(ブレード或いは差し込み極)に電線と接続するねじがあるので、そこに〝?〟を巻き付けて止めると、芯線の先端がバラけないようにであろう、糸状の金属線をあてがい、はんだごてを押し当てる。金属線こそがソルダー・はんだであり、加熱用のこてであると理解する。

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「ちょっと臭うぞ。はんだの広がりを良くするフラックスという成分が蒸発する」
 煙が一筋立ってジュッと音を立てて金属線が溶け、銅の芯線をサーッと銀色に変えて行く。その臭い。
「松ヤニ?」
「よく知ってるな」
「軟膏や香油に入っている場合もあるから」
「なるほど」
 交換したプラグ部品を元通り組み立てて、コンセントに挿し、電源オン。
 トルコのポップス。
「わぁ、ありがとう」
「今後はこの白いところ(プラグ本体)を持って抜き差ししてくれ。これセゼン・アクス(Sezen Aksu:アーチスト名)か、ええもん聞いてるな。アジアテイスト好きかい?」
「こんな顔してるから……かどうか判らないけど、強さの中にちょっと寂しげな感じがあって。って、よく知ってるね。トルコの楽曲が日本で流行ってるわけじゃないでしょ」
「オーディオマニアだからさ。いい音いい声いい演奏、常に飢えてるから世界中探してるよ」
「何それ」
 レムリアは思わず笑った。すると。
「ようやく笑顔を見た」
 相原は小さく笑った。
「え?」
「あ、無理して笑えって言ってるんじゃないぜ。あんなもん、ショック受けて当然だろう。命の冒涜そのもので、君のしていること、したいことと真逆のベクトルだ。むしろ、こりゃ仕方ないで済ませてしまって、その後その先を気にした俺たちの方が残酷かも知れない」
 相原は少し慌てて言い訳する風に。確かにゲロ吐いた背景は彼の言うとおり。ただ自分自身引っかかっているのは。
「死ぬ……という現象に対しては、妙な話、慣れてしまっている部分はあるの。看護師資格を取ったボランティアは貧困、疫病、戦場、そんな所に行くから。対応しても既にとか、今まさにとか、こんな腕より小さな赤ちゃんがね。最初のうちは動揺して悔しくて……でも今は、端から見れば残酷な態度、文字通り魔女に見えるかもね。なのに、さっきのは……」

(つづく)

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