【理絵子の夜話】空き教室の理由 -86-
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エピローグ
“悪魔教頭逮捕-”
翌日夕刊の見出しは、その後暫くマスコミを賑わした。
父親経由で仕入れた情報によると、保存証拠と内川のDNAは完全に一致したという。また、二宮あゆみ宅周辺に怪文書をまいたのも内川で、理由は当然彼女が内川の“要求”を断ったから。投石も放火ももちろん内川だ。住職はそうした行為があゆみちゃんを最終的に死に向かわせたと言ったが、なるほどそこまでされれば耐えられまい。ただ、彼女は怪文書に対するように、自らも文書を残し、それが結局は今回の逮捕に繋がった。
ちなみに、理絵子の母親の車にぼろ布を詰め込み、担任朝倉の部屋に侵入して携帯番号を調べ、電話をして理絵子と引き離す小細工までしたことも判明した。なお、内川により命を絶たれた…殺された生徒は件の2人だけであり、それぞれ14年前、8年前の事件だったが、歯牙にかかった生徒はピアノ内部の写真から20人以上に及ぶことが判った。
教頭による長年の暴行と殺人。影響を考慮して1週間ほど学校が休みとなったため、理絵子たちは二宮あゆみの菩提寺を訪問した。墓前に捜査結果を報告すると共に、錫杖は住職に返却。
「お持ち下さって良かったのですよ」
住職は言ったが。
「これは守るためにと借用させて頂いたもの。立派に私の大切な人たちと、私自身を守ってくれました。事が済んだのなら本来あるべき場所に帰還するのが然るべきと存じます。その故は発揮する力のあまりに大きく、わたくしの手に負えるものではなく」
理絵子は言った。そして続けて。
「法力は常用するにあらず、と、わたくしに説いた師は申しました。瞳に黒曜石の輝き絶やす事なかれ……わたくしはこれを、力に目を眩ませるな、と理解しています」
住職は理絵子の言葉に大きくゆっくりと頷いた。
「その歳でそこまで……。拙僧はもしかすると、追って名を残すお方の少女の時代に生きているのかも知れませんな」
住職は理絵子が座布団の前に置いた錫杖を、手元に引き寄せた。
「ではこれは確かに」
「ご住職」
「何ですかな?」
「一つお伺いしたいことが。わたくしの力は従前わたくしの危機を事前に察知し、危機より免れることを許していました。しかしこの度は危機自体は訪れ、追ってこの錫杖や友の思いによって救い出されるという経過をたどりました。この意図をなんと解釈すれば良いかと」
「なるほど……」
住職は一旦立ち上がり、錫杖を紫の袱紗に収め、引き出しにしまった。
再び理絵子の前に正座する。
「必然であった、と解釈できますまいか」
「無駄は無駄という言葉のみなりと」
理絵子はそう応じた。どこかで聞いた話だ。仏教の概念だったと思うが、この世に無駄というものはない。強いて言うなら無駄という言葉の存在そのものが無駄だ。追って無駄と感じたことはあっても、それを無駄と判ったという意味で無駄ではなかった。
(次回・最終回)
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