【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -19-
「操舵室。コンクリの広いスペースに下ろして。昇降口から皆さんを収容する」
『了解』
さてこの船は地上への発着において空気圧を利用し、応じて周囲に暴風が生じるのであるが、子供達と畑がある中で竜巻レベルの風を出すわけにも行かぬ。
「滑空降下する。所要10秒」
『了解』
レムリアは答え、森宮のばらの手を引き昇降口そばまで移動し待機。滑空というのは要するに補助動力として「帆」を持っており、これを水平に広げてグライダーのように使うことを言う。
昇降口わきの液晶モニタをオンとし、屋外を伺う。子供達は泣きじゃくっており可哀想だ。5秒10秒が長く、惜しい。
さてこの時レムリアとしては違和感を覚えている。自分の魔法……ムーンライト・マジック・ドライブは「操る者が何らか意図持ち行動している時」それを促進するように、周囲にいる生き物に働きかけるような作用をする。すなわち意思持つ動物は支配下に置いて意図通りの行動をさせることが出来、だからイヌネコは従うのであり、そして脊椎動物以外の節足動物や昆虫は魔女の行動を助け、意思達成を妨げる者を妨害する。前述の事件で教室に現れた大量のゴキブリもそうした作用の一環だ。その時は凶器持つ者が人質取ることを恐れたのだが、ゴキブリによって誰もその者に近づけず、その者も動けなかった。比してこの場合、ハチは魔女の意図を汲んでただちに雲散するべきであるが、そのような動きは見当たらない。ハチたちの怒りの故に魔法が奏功していないのか、
それを自分たちで解決しろ、する意義があるという大いなる意思の故か。
着艦。
「のばらちゃん!」
「はい!」
二人は昇降口が開くと、スロープが延びる間も惜しく陽光の下に飛び降りた。森宮のばらは虫を追いかけていたせいかそうしたアクションに躊躇はないようであるが、にわかベジタリアンの生活が長かったか、着地した時にバランスを崩して前のめりに転んだ。
が、痛いも言わず立ち上がる。
「しくじった。大丈夫だよ」
「オッケー、みんな!こっちへ!助けに来た!」
手を振って誘導を試みる。その間に森宮のばらは走り出し、子供達に声を掛けつつ、ハチを手で追い払う。みんな、あの船へ行って!
レムリアも行きたいがすべきことがある。わんわん飛び回るハチは数百。子供達はざっくり30。
この空飛ぶ船は救助に“奇蹟”が必要な場所・状況において、超能力と科学を集結して実際奇蹟を起こしてその目的を達成するために存在する。彼女は魔法担当である。一方、科学力の代表として、救助活動の妨害・障壁の排除に備えた、“支援機器”と称する、有り体に言えば高速高出力の銃器を幾らか搭載している。
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