魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -123-
そのまま相原に身を預ける。相原は少しよろけたが、自分の腕を引っ張って肩に回し、もう一方の腕を腰に回して抱き、自分を支えてくれた。何だろう、されるがままというか、頼ってしまっているというか、プロジェクトメンバーの中では自分に最も年齢が近いせい?まるで兄に世話される妹だ。
イヤホンにピン。地球大気内に回帰。アルゴ号の場合、船体前後にチューブを形成してその中を進むので、従来型宇宙機で最大の危険を伴うイベント〝大気圏突入に伴う断熱圧縮による超高温〟は発生しない。
自分の個室のドアを開ける。緊張が解けたか急激に吐き気が強くなり、奥にあるトイレに行って嘔吐する。相原は背中をさすってくれ、うがい用にとコップの水、更に一口飲めとミネラルウォーターのペットボトルを渡してくれる。
「横になり」
「そこまでは大丈夫」
ベッドに座る。その間に相原学は「ちょっと」と個室を出、その〝はんだごて〟を取ってきた。電子工作用の溶接作業の一種と相原の認識で知った。小さな指揮棒のような、ソルダーアイロンと言っていたが、ヘアアイロンを小さくしたようなキカイであり、コンセント電源で加熱して使うものだと判る。スポンジの入った金属容器があり、相原がシャワー室へ行ってそこへ水を入れる。こてに通電して金属容器に立てかける。
加熱に時間が掛かるというのでベッドの下からクッキーひと山取り出して「良かったらどうぞ」
「市販品じゃないね。作ったの?いただきます」
相原は一つ口に入れた。
「試作中。救助先の子ども達とコミュニケーション取るのに食べ物って万国共通で強力かなって。栄養不良の場合も多いし。ところで〝いただきます〟ってどういう意味なの?」
「サクサクで美味しいよこれ。日本のいただきますというのは、食品って水と塩以外は何か生き物だったわけじゃん。その命の犠牲の下に生き続けさせてもらいます。そのお命頂きます、という命に対する感謝と贖罪。そして、調理を担った方へのありがとう、だよ」
「なるほど」
レムリアは頷き、両の手をパチンと合わせた。教会孤児院で食事を共にするときは〝天の父〟に与えてもらった旨の祈りを捧げるわけだが、こちらは命に直接ということか。まぁキリスト教のそれは代わりに天の父が贖ってくれているのだろうが。
「んでコレだけどね」
相原はクッキーポリポリしながらCDステレオを手に取り、背後の電源ケーブルを引き抜く。
「はい」
「これプラグじゃなくてケーブル持って引っこ抜いてるだろ」
「うん」
「だから根元にストレス掛かって断線しちゃうんだよ」
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -23-(2026.01.07)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -22-(2025.12.31)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -87・終-(2025.12.27)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -21-(2025.12.24)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -23-(2026.01.07)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -22-(2025.12.31)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -21-(2025.12.24)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -20-(2025.12.17)


コメント