魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -154-
相原は記事を数ページめくる。挿入されたグラビアに写っている戴帽式でナースキャップの彼女。王宮の庭だろうか、馬にまたがりポロのスティックを操る彼女。どこかに国賓として家族で訪れた時のものだろう、青いドレスで豪華な彼女。
「姫」
「はい」
「看護師さんコレ普通の入院食……」
相原は尋ねた。
「ええ、さすがに冷めたからレンジでチンしたけどね」
「レッキとした王族の娘が都内の病室でシャケ弁当を食べているの図」
「あのー描写しないでいただけますかねはんてんの騎士殿」
「これは失礼。しかしホントに?」
「ホントに」
「ホントのホントに?」
「ホントのホントに」
「だとしたら国賓待遇じゃ……」
それを聞いてレムリアは箸を置いた。
「いいです。このまんまで。今まで通り扱って下さい」
姫、と聞いた瞬間、みんなの態度が変わってしまう。一歩引いてしまう。ガラスのバリアを張ってしまう。
それは、いや。
特に、この、相原という青年はそんな存在にしたくない。
「いいの?じゃない、よろしいのですか?」
看護師は困惑気味に訊いた。
「ええ。そういうの嫌いなんです。私は私なのに家系だけでみんな勝手に決めてしまう。なのでどうか」
「判った。じゃ、特別扱いはしないよ」
看護師は言った。
「ありがとうございます」
レムリアは頭を下げた。その後、二人はカルテを作ったのだが、女の子だし、ということで相原は外へ出された。
相原が向かったのは休憩室。携帯電話の電源を入れようとし、電池切れで応答せず、新聞を手にする。
〝欧州宇宙船、戦争を止める〟
イスラエルと東京湾のクジラが写してあり、更にイスラエル側はアルゴ号が作った光の柱を公開している。犯人はネオナチの手合いとだけしてあり(イスラエル視点ではそうなろう)、解決は欧州宇宙機関が秘密訓練していた新型宇宙船にレーザ兵器THEL(Tactical High-Energy Laser)を積み込み、というストーリー。まぁ誰かがデッチ上げた以外の何物でもない。無論、日本人某が出てこない一方、人種差別の繋がりも出てこない。以下もんもんと社説や政府の対応への苦言、安全保障だ自衛権だ。
相原が呆れて戻ると看護師がカルテを胸に立ち上がったところ。
「終わった……」
「よ。いいよ。じゃあ身元保証その他の窓口は派遣団の方に照会すればいいのね」
「はい」
「判った。治るまでゆっくりして行きなされて」
「ありがとうございます」
レムリアは答えた。自分を見る相原の目が変わっていると感じる。メディア姫を見る目になっている。
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