魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -156-
恐らく、今後のことを考えると、彼には正直に話すべきなのだろう。が、今それを全て話すのは時期尚早、というか、おのずと知ってもらう時が来る、そんな気がする。
なので。
「いい思い出ないもん。多分どこの姫様にも大なり小なりあると思うよ」
レムリアは目線を外した。
相原は両の手を広げて軽く持ち上げた。アメリカ映画で諦念の意思表示に使われるジェスチャー。お手上げ、ノータッチ。
「判ったごめん立ち入ったこと訊いて。レムリアとしか呼びません」
「いいよ、別に」
レムリアは笑った。ごめんね。
すると、相原は薄笑みを浮かべて。
「姫君か。船乗って奇蹟を起こして回る姫ね……いいじゃんか、なるほどミラクル・プリンセスだな」
「そうかな」
ちょっと照れる。それは目の前開かれたままの記事の最後の方に書いてある。キームゼーでも聞いたことだが、自分が言ったことではないから、周辺にそう言われているということだろう。
ただ、アルゴ号は本当に奇跡を起こすためのキカイだ。メディア姫がアルゴ号で救助する側。それはそれでいいではないか。
「かっこいいじゃねぇか。姫様舞踏会でドレス引きずり回してるだけじゃねえぞってな」
レムリアはブッと吹いて笑った。姫様イメージぶちこわし。
彼の目が、レムリアを見る目に戻ったと知った。
「副長とか、どうしただろ」
話題を変える。〝最大の懸念〟が解決したせいだろう、次の心配はそっち。
ハッと気づく。まずその心配をすべきだったのでは。……自分優先に反省。
「ん?新聞には何も書いてないよ。オレも逮捕されたが現在ただいまここにいるわけで。乗組員推して知るべし。イスラエルは写真出してるし、ちありちゃんに発言されたら日本政府は信じるしかないでしょ。コルキス本部と裏で何かやってると思うし。何でも同盟国合衆国の言いなりの可愛い犬ってわけじゃない。心配するこたないと思うぜ。何か感じるか?」
テレパシー。予感など特になし。
「そっか。そうだね」
レムリアは頷くと、箸を盆に戻した。
「ごちそうさま」
久々にまともな食事を摂った気がする。今回船の中では自分のクッキーすら口にしなかった。
「もういい?売店で何か……」
「ううん、いいよ」
レムリアはうーんと唸って伸びをした。相原が空食器を載せた盆を脇机に移す。
外が騒がしくなってきた。救急車のサイレンに加え、ヘリコプターの飛行音。応じて廊下をバタバタ行く足音が幾つか。
隣の老夫婦の見ているテレビに速報。空撮画像によれば、玉突き事故にバスが巻き込まれ、横転している。
「船があれば……そういや船は?」
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