魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -159・終-
「ストップ」
言われて心臓マッサージを一旦停止。レムリアが人工呼吸。
「どうしました……あ」
ナースコールで駆けつけたのは小柄な看護師。先ほどの看護師ではないが、事態は瞭然。
「吐血しました。ドクターをお願いします。喫煙したようです。CPR(心肺蘇生)はできますので手配願います」
レムリアは血塗れの顔で状態を報告した。看護師は数回頷き、腰につけている院内PHS電話機に手を伸ばした(PHSは一般向け簡易携帯としては2010年までに殆ど姿を消したが、企業の内線電話向けとしては引き続き利用されている)。
「すぐ戻ります」
看護師はひとこ言うと、一旦その場から走って消えた。
程なくして別の看護師とストレッチャーを持って来る。
「学!」
「はいよ」
看護師らも加わり、老男性をせーので抱え上げ、ストレッチャに移す。
「手伝います。私もナースです」
レムリアは血を拭うこともせず、ストレッチャーの下にあったAEDを見つけて中を開けた。
看護師のPHS電話機が鳴る。
「はい、判りました。今AEDを……すぐ行きます」
看護師が応じ、電話を戻す。
「手術室へ行きます。じゃあ悪いけど一緒に」
「もちろん。学、お母様のほうお願い」
レムリアは言うと、看護師らと共に、ストレッチャーを押して風のように去った。
相原はその後ろ姿を見送ると、口の端に薄笑みを浮かべた。
「あの……おじいさんは……」
夫人が心配そうに相原を見上げる。
「大丈夫です。ちょっと出血したようです」
相原は膝小僧をすりむいたかのように軽く言った。
「でも」
ベッドは血の海であり、一部したたり落ちるほど。
「大丈夫、彼女……医療奉仕活動やってましてね。世界中で沢山の人々を助けてます。自分も同じように肺に骨が刺さりましたがこのように。彼女のおかげです。待って下さいね。今後の対応について看護師に連絡を取り……ああ」
相原は言うと、自分が座っていた椅子を夫人に勧めた。そこへ、連絡を受けたのだろう、先の愉快な看護師が小走りで到着。
「あれ?坂口さ……」
夫人が所定の位置にいないためか、見回す。
「こっちです。大丈夫です。落ち着いてらっしゃいます。ベッドの交換を……」
看護師は夫人が移ったことに気づき、表情を緩める。
「オーケイ。手配する……もう一度洗濯だねそれ」
「ですかね。で、お母様どうしましょう。説明を受けられたいと思うんだけど」
相原の言葉に、看護師は小気味よいとばかり、口の端に笑み一つ。
「ご案内しますのでこちらへ」
看護師は夫人を伴って立ち、出入り口で立ち止まると、相原を振り返る。
「彼女は?」
「もちろん旦那さんと一緒に。来るのを待つ娘じゃないっす」
「やれやれ……入院が伸びるぞ。鬼だね」
「いや、魔女の本領かと」
アルゴ・ムーンライト・プロジェクト/第2部~魔法の姫君とはんてんの騎士~ 完
(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト・終)
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