【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -25-
超能力な追跡が出来なくはない。とっ捕まえることは出来なくない。ただ。
「探してくれようとしてる?探しても無駄でしょ。向こうは清々したと思ってるわけだし、仮に見つかっても元に戻ることはないよ。別の追い出すか死にたくなる算段をするだけ。こっちこそスッキリ縁切れて根無し草。あんなのに怯えて暮らすより一人で生きた方が気楽。どのみちいつか抜け出そうと思ってたし。不動産屋さんすいませんでした。先生も……親と暮らせないとか、テレビで見たけど震災孤児とか預かる施設さえ見つけてもらえれば……」
森宮のばらの目から、そう言いながら涙溢れる。心と裏腹な、そして目一杯の気丈な振る舞い。
このままではこの娘は壊れてしまう。
「のばらちゃんウチにおいでよ」
姫子が思わず言うと。
「だめ!」
森宮のばらは強く拒否した。
「それはだめ。仮に今夜一晩は泊めてもらったとしてその後どうするの?金なし服なし穀潰しだよ私。今日一日だけであんなに、あんなに迷惑掛けたのに、もうこれ以上は……その……お友達だと思うから……お友達には……」
唐突に段ボールを抱え、歩き出そうとする森宮のばらの行く手に立ったのは平沢進。
「森宮さんちょっと待ってくれ。俺ら何も迷惑だなんて思ってないぜ。それに心当たりがあるから……先生、携帯電話を貸してくれ」
「構わんが、どこに掛けるんだ?」
森本は首から下げた携帯電話(スマートホンではない)のロックを解除して差し出した。
「光龍寺。ウチの裏手のお寺さんです。そこでトワイライトスクールを運営しているのはご存じかと」
電話番号をプッシュしながら話す。
「ああ、働いてる親御さんが帰るまで預かって、だな」
姫子は気付いた。そう言えば。
「泊まりを始めたんですよ。親御さんに病気やなんかでどうにもならない時に備えて……地震の後整備しました……あ、進です。いつもお世話になっております。その……『どうにもならないこと』が僕の友達に発生しまして……あ、はい」
森宮のばらは振り切って歩き出そうとする。平沢はその手首をヒョイと掴む。野球部少年の握力は華奢を極めた少女の全力の及ぶところではない。
「副住職。進です。……はい、女の子です」
『その子はそばにいるかね?その子にこの電話を聞こえるように出来るかね?』
平沢進は携帯電話をハンズフリーモードにした。
「どうぞ」
『女の子さん。安心していらっしゃい。妻と待っているよ』
「あ……」
森宮のばらが何か言う前に、電話は切れた。同時に、平沢進は手を離した。もう、森宮のばらは走り出したりしない。
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