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2026年1月28日 (水)

【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -26-

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「衆生を救う仏に仕えている坊主として、困った人を、ましてや子供さんを救えない大人の坊主に価値はなし。だから安心して連れてこい。副住職はオレにそう言ってた」
「でも……一方的にお世話になるなんて……」
「『子ども食堂』もやってるんだよ。そこで働いてくれればいいってさ。調理配膳のほかに、小さい子供達の話し相手になること、新しい友達になること、かけがえのない価値があるんだ、って。オレさ、よく言われんだ『お前誰それの友達になってやれ』って。普通それやられた方はムカつくじゃんよ。大抵、好きで一人でいるんだし。でも、中には本当に一人にしちゃいけない奴って、いるんだよ。そういう時の友達って、無敵なんだよ。だからお寺の方針はよく判る。森宮さんがそういう無敵の友達になってやってくれれば」
 森宮のばらは途中から目を見開き、その瞳を揺るがせて彼の言葉を聞いていた。書くまでもあるまい。“逆の立場”の意味と重さを彼女は理解している。
 そして涙を拭い、こくん、と、頷いた。
 姫子は、森宮のばらの目の下に、ハンカチを添えた。
「じゃぁ、行こうか。少し身の回りの物買いそろえた方がいいね。のばらちゃん一緒に来て。上のスーパーに寄るから。進君はぶっちゃけ荷物持ち手伝ってもらっていい?」
 姫子は言った。
「いいぜ。先生携帯返す」
 平沢進は森宮のばらの段ボールをひょいと持ち上げた。
「あ」
「おいおい女の子の私物を勝手に触るもんじゃないよ」
「え?そうなの?……これ姫ちゃ……相原さんのチャリンコ荷台に括っていいか?」
「いいよ。荷台にゴム紐巻いてあるから」
「オーケー」
「あ、あの……」
「気にするな友達じゃねぇか……大きさの割に軽いなこれ」
 先だって歩き出す平沢進を森宮のばらが追いかけて階段を降りて行く。
 姫子はそれを確認すると、大人二人に向き直る。
「先生は福祉面の可能な対応をお願いします。必要に応じてお寺か、私の家の方で大人の対応は手伝います。不動産様には不躾に怒鳴ってすいませんでした」
 姫子はそれだけ言って、先行く二人を追った。
 階段を降りて、買うべき物を確認するため、平沢進には“回れ右”をさせ、段ボールの中身を確認する。果たして森宮のばらの「私物」は、乱雑に放り込まれた学用品と体操ジャージだけであった。私服はおろか寝間着も肌着もない。
「パジャマとかは?」
「持ってたけど……出て行く時に汚えって捨てたんじゃない?私が自分で洗濯してたし」
 極めて残酷な物言いだと思うが、森宮のばらが腹を括っており、サバサバした喋り方なので、ヘタな同情はやめておく。不動産屋氏と別れ、徒歩で来たという森本と共に学校へ向かい坂を上がって行く。沈黙が怖いので会話。トワイライトスクールと泊まりのシステム。スケジュールやら決まりごとやら。その間森本は彼女らとは距離を置き、あちこちに連絡。それなりの対応マニュアルがあるということだろう。

(つづく)

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