【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -23-
7
「姫ちゃん。森本先生から電話」
彼女が“母”と呼ぶ夫候補の母の声に、彼女は眉根を潜めた。その日の夕刻、5時半近くで、これから早めの夕食を摂って塾へというところ。森宮のばら関連に相違ないのだが、彼女は30分前に森本に引き渡している。ちなみに二人ともハチに刺されたわけではないが、森宮のばらは何度か転んだし、自分も膝突いての方向転換や、道路脇の草に触れるなどして、絆創膏の必要な傷を幾つか作って適当にやさぐれている。
「はい。お電話代わりました」
『ああ、森本だが、君、森宮の生徒手帳を知らんか?』
「は?」
唐突すぎて事態が飲み込めない。ただ、電話の向こうに森宮のばらの嗚咽が聞こえる。
「のばらちゃん何かあったんですか?」
『……ああ。それで……』
要領を得ない。言葉を濁す何かがあるのは判る。
「今どこですか」
『いや……』
面倒くせぇ。テレパス使わせろ。
「彼女のおうちの前ですね?のばらちゃん聞こえる?今行くからちょっと待ってて」
電話を切り、ジーンズにブラウスの上半身に体操ジャージを上着がわりに羽織ると、母なる人も慣れたもので。
「塾には連絡しておくわ。何かあったら電話なさい」
「はい」
電動アシスト自転車に電池を仕掛けて車庫から駆け出す。彼女のアパートは家から左へ出て坂道を上がった方が早いが、生徒手帳がどうのと言った。落としたか何かしたのだろうか。ならば彼女が寝そべっていた草むら四阿の前を通ってみようか。
右に折れて急坂登って学校の方へ。学校前の十字路を左に折れて遊歩道……そこにはジャージ姿の平沢進が懐中電灯を持って地面を照らしている。
「ヒラ、どうした?森本先生からの電話?」
彼には伝言を頼んだので、森本がアクセスするなら自分と彼だろう。
「ああ、森宮さんが生徒手帳をなくしたって……でも、見つからない」
見れば草むらはかなり踏み倒されており、彼がくまなく探してくれたと見て取れる。
超感覚はここにあるとは言ってない。ならば寝かした船内か。いや、船は活動前後の自身の質量を見ているので、あればそれと判る。
散々暴れ回ったバスの転回場だろう。自分の物じゃないので認識が薄く、超感覚は反応しなかったのだ。
ともあれ。
「彼女の泣き声が電話越しに聞こえた。どうも普通じゃない。行ってみようかと思う」
「家知ってるの?」
「判るよ」
「オレも行くよ。報告しなきゃならないし……あ、オレは走って行くからいいよ」
自転車とランニングで並んで走り、二人は川沿いへ向かう長い坂道を降りて行く。道は細く、舗装が古くデコボコしており、聞くに住宅街ができる前からあるとか。
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