【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -28-
森宮のばらの足元に首の後ろを擦り付け、尻尾で触れる。
「オレも友達だぞ忘れるなって」
「うん……そうだね……そうだね……」
森宮のばらはしゃがんで涙ぐむ。ただそれは悲しい涙ではなく。ヒロスが顔を擦り寄せる。
「さ、行こう。ご飯作ってもらってるし……ヒロス、のばらちゃんならウチらに任せな」
姫子は言い、のばらに手を伸ばした。
「うん」
姫子らの自宅がある隣の(バスが通る方より造成は古い)住宅街に入る。自分の家を通り過ぎて住宅街を西端まで横切ると、末端崖上にある平沢宅に達する。彼宅庭先から歩行者しか通れない細道があり、コンクリート擁壁に沿って、墓地へ寺へと降りて行ける。墓地の向こう、トワイライトスクールに使っているプレハブに明かりが灯っており、片隅の厨房からは湯気が上がっている。この建屋は基本食事と一時預かりで、お泊まりは元宿坊を使っているという。
「これも私のために……本当に申し訳ない……」
「カレーだ」
平沢進が鼻の穴を動かして言った。なお本人は森宮のばらを笑わせようとゴリラの真似をしたのであるが、当の森宮のばらは見ていなかったようだ。
「おーい、進君、姫ちゃん」
プレハブの窓が開いてこちらに手を振る。副住職の奥さんである。
「すいません遅くなりました」
「大丈夫よ~二人も一緒に食べてって。おうちの方には連絡しといたから」
「はーい」
「ありがとうございます~」
平沢宅に自転車を置かせてもらい、荷物を分担して輸送。一通り挨拶を済ませ、平沢進は食事の手伝いへ。二人は台車(荷物カート)を借りると、買い物をドサドサ載せて本堂を通り、阿弥陀様に一礼。元宿坊へ移動し準備。襖を開くと板張りに改装され、二段ベッドが2セット入った6畳間。これが2部屋あって、計8人が寄宿生活できる。森宮のばらがクローゼットに衣類を展開、その間に姫子が倉庫から寝具を持ち込む。
「二段ベッド使い放題。上?下?」
「どうせなら上」
「落ちないでね」
済んだところで森宮のばらをベッド下段に座らせ、アパートのコンクリ床に座り込む等で出来たのであろう、昼以降の新しい傷跡に処置して行く。オキシドールを吹くと泡が沸き、脱脂綿で拭って絆創膏を貼り、昼に貼って剥がれたり汚れたりした奴も貼り替える。
足音があり副住職の奥様。
「終わった?ご飯できたよ」
「はい」
トワイライトの遊戯室は折りたたみのテーブルとパイプ椅子を並べて食堂に変身。既にカレーライスが盛り付け済み。
「約一名量が違うように思いますが……」
カレー皿が二つに対し、大きなラーメン丼がひとつ。
「オレカレー丼にしてもらった。いただきま~す」
平沢進がとぼけ顔。
「おばさまズルくないですか?これ」
姫子が口を尖らせて副住職の奥様に訴えると。
「いいのよ。進君にはいつも手伝ってもらってるから」
森宮のばらが口を開けてあははと笑っている。
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