魔法の姫君とはんてんの騎士(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部) -131-
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居並ぶベッド群の中へ放り出され、失神状態で二転三転。レムリアは彼に向かって走り出そうとしたが、アルフォンススが捕まえ、巨躯を被せて床に伏せる。
その腕の隙間からレムリアが見たもの。
高濃度二酸化炭素の空間で動くことが出来、しかし自分のテレパシーに感応せず。
電子機器なら感じ取れるアルフォンススですら気づけなかったもの。
ネアンデルタール人の復元図のような筋骨を備え、カビの繁殖を思わせる青緑の皮膚。2体。
動いているが生きていない。
「ゾンビだ」
アルフォンススの乾いた声。〝それ〟は死んだ人体を改造し……クジラリモートコントロールと同じ方法で神経系に電流を流して遠隔制御……アルフォンススの推定。
リモコンのゾンビ兵。応用したのがクジラか、その逆か。
その〝目〟が自分たちを見たと思った次の瞬間、視界に割って入ってくる2人の大男。
ゾンビ兵2体の動く速度は異常という以外の何物でもなかった。
凄まじい速度でその手足は動いた。ネコの反射と駆動速度であった。対抗できるのはアリスタルコスだからこそであった。彼はその〝ニンジャ〟の反射神経で殴る腕を撥ねのけ、蹴る足を躱し、今度は自身が飛び上がって回転蹴りを顔面に与える、が、びくともしない。
と、書いたが、ここまでの動きは1秒以内である。レムリアは超感覚によって起こった事象を後から動画に起こし直して確認することが出来る。リアルタイムをスローモーション化して認識できると書くか。1人だけ時間の進み方を可変出来るような感じである。
一方のラングレヌスは要するに〝ボコボコ〟に殴られているのであるが、特異な肉体のせいか、その衝撃で少しずつ後ずさりこそすれ、相原のように吹っ飛ばされるまでは行かない。
アルフォンススが腕と一体化した銃口を向けるが、ゾンビ兵の動きはあまりに速すぎ、双子を避けて照準発砲という時間が取れない。
青黒い液体がピシャピシャ周囲に飛び散る。死体を制御しているだけなので、保持する薬液が末端の細胞までは行き届いていないのか、壊死分解した組織片が少しずつ飛び散っているのである。であれば。
レムリアはその故に逆に酸素があると一気に腐敗すると予想した。二酸化炭素濃度が高いからこそ使える〝生きてない〟兵士。
この部屋に外気を導入すると?
「船長、私を相原さんのそばへ投げ出してください。銃で壁に風穴を開けます」
「君が銃を?……判った」
アルフォンススは、一瞬躊躇しつつも、レムリアの身体を、床面滑らすように投げ出し。
自らは銃を突き上げて雄叫びを上げた。それは傭兵だという普段の彼を思わせるウォー・クライであった。
(つづく)
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